学生寮が舞台の傑作青春小説 『お庭番デイズ 逢沢学園女子寮日記』有沢佳映

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お庭番デイズ  逢沢学園女子寮日記 上

『お庭番デイズ  逢沢学園女子寮日記 上』

著者
有沢 佳映 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784065197004
発売日
2020/07/16
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

お庭番デイズ  逢沢学園女子寮日記 下

『お庭番デイズ  逢沢学園女子寮日記 下』

著者
有沢 佳映 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784065197011
発売日
2020/07/16
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

学生寮が舞台の傑作青春小説 『お庭番デイズ 逢沢学園女子寮日記』有沢佳映

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 都内にある中高一貫教育の共学私立学校、逢沢(あいざわ)学園には自宅通学生の他に、学園敷地内にある男子寮と女子寮から通う生徒がいる。本書は校舎の玄関まで徒歩二分の女子寮が舞台だ。寮生はまだまだこどもから抜け切れない十三歳の一年生から大人一歩手前、十八歳の六年生まで。授業中以外は四階建てのこの寮で共同生活を営んでいる。一年生から三年生までは同い年三人で一部屋、四年生以上はふたりで一部屋があてがわれる。

 一〇一号室の戸田明日海(とだあすみ)(通称アス)、藤枝侑名(ふじえだゆきな)、宮本恭緒(みやもとたかお)は一年生。最初は小学生気分が抜けなかったが、半年近く経つと、すっかり寮生活に馴染み楽しんでいる。朝は六時半に起床、掃除を終えると食堂で全員一緒に朝ご飯を食べる。大急ぎで洗面とトイレを済ませれば、あとは学校へ一目散。行きたくないなんて言っている暇はない。

 この女子寮には「ピープル・ヘルプ・ザ・ピープル」というモットーのもと、寮生は学園内のトラブル解決に取り組み、人助けをするという約束事がある。その情報収集を行う任務が「お庭番(にわばん)」だ。先輩たちの卒業によって一〇一号室の三人がお庭番に任命された。最初は嫌がっていたアスたちだが、次第に真剣に取り組むようになっていった。人助けといっても大人から見れば思春期にありがちな淡い恋やら喧嘩(けんか)やら。でも彼女たちは真剣に考え、解決へ導く。

 登場人物が七十人以上(幽霊含む)なのに物語が進むうちにきちんとキャラクターが立ちあがっていく。凄惨(せいさん)な事件は一つも起こらないのに寮生活はワクワクドキドキの連続だ。彼女たちの悩みに感情移入してついほろり。

 学生寮を舞台にした青春小説の傑作だ。

光文社 小説宝石
2020年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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