六人の奮戦記――『もしかして ひょっとして』著者新刊エッセイ 大崎梢

エッセイ

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もしかして ひょっとして

『もしかして ひょっとして』

著者
大崎梢 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334913694
発売日
2020/10/22
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

六人の奮戦記――『もしかして ひょっとして』著者新刊エッセイ 大崎梢

[レビュアー] 大崎梢(作家)

 シリーズ化を考えない読み切り短編で、内容はミステリー。そんな話を書いてみませんかと提案され、自分なりに挑戦して、一冊にまとまったのが『忘れ物が届きます』です。

 あれから六年半、再び短編集が出ます。今回はテーマが設定されたアンソロジーや、雑誌の特集に参加したさいの短編を集めてみました。同じ光文社から、今年は『さよなら願いごと』も出ていますが、あちらは殺人事件の絡んだ重めの長編。短編集はもう少しふわっと、苦味があっても柔らかく、読後感の軽快なものを選んだつもりです。

 収録作のひとつは男子高校生が主人公で、私の作品にしては珍しく生徒会役員です。かといって、校内に巣くう巨悪に立ち向かうわけではなく、体育館を使っている運動部の部員たちから、バスケットボール部の練習について猛烈なクレームが入ります。あれはひどすぎる、なんとかしろと。みんなの剣幕に押され、渋々乗り出してみればという展開に。

 八十代になる元大学教授が右往左往する話も、ぜひ読んでいただきたい。妻に先立たれ独り暮らしながらも、気心知れた通いの家政婦さんがいて心丈夫。平穏な日々を過ごしていたのに、突然辞めると言われてびっくり仰天。なぜどうして。いくら考えても理由が思いつかなくて。

 書き下ろしの一編は、無人のはずの親類宅で、死体を見つけてしまった大学生の話です。予想外の出来事に直面し、まさに茫然自失(ぼうぜんじしつ)。彼の運命やいかに。

 六編の主人公は、それぞれ年齢も境遇も異なるのですが、スマートでもなくクールでもなく、どちらかといえばお人好しの部類かも。貧乏くじを引きがちで、何かと不器用で、いろいろ危なっかしい。

 そんな彼らが「もしかして」「ひょっとして」と立ち止まり、考えたり走りまわったりしながら、真相に近付いていきます。その過程ごと楽しんでもらえたらと願っています。

光文社 小説宝石
2020年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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