『霊能者たち』
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霊は生きている――『霊能者たち』著者新刊エッセイ 嶺里俊介
[レビュアー] 嶺里俊介(作家)
今回も崖っぷちから生まれた作品である。
二年前の夏のこと。受賞後の新作が発表できないまま、もう三年目。このままでは物書きとして死ぬという、強烈な危機感と焦燥感があった。
ふと短編を打診されていたことを思い出した。日程を確認したら、次に予定している長編の取材旅行まで十日ほどある。
コーヒーを飲むため湯を沸かし、居間でノートを広げた。コミックを原作としたミステリードラマのDVDをBGM代わりに流しながら、いったん頭を空(から)にする。
まず、自分を縛る。ネタはゼロから。取材旅行の前日までに仕上げて、担当者へ短編企画として送ること。
そこへドラマの主人公の決め台詞(ぜりふ)が聞こえてきた。
閃(ひらめ)いた。追い詰められると、どんなものでも創作の起爆剤になるらしい。一気に話が組み上がり、ノートにペンを走らせる。
取材旅行の前日、無事に書き上げた短編(収録タイトル「霊能者の矜恃」)を送ったものの、頭を過(よぎ)るのは不安ばかり。
旅行から帰宅した私に届いていた、短編企画の返事。追加の短編(「鳥は涙を流さない」)とほか数編のあらすじを付けて提出した連作短編企画は、最終話はオールキャストで難題に立ち向かう書下ろしで、という注文が出たものの、刊行化まで話が進んだ。生き返るとはまさにこのことだ。
幽霊という概念は誰しも持っているが、十人十色である。だが既存の概念をそのまま使うつもりはない。読者に新鮮な刺激をもたらしてこそ物書きというもの。うおお。
世界中で語られる心霊譚は枚挙にいとまが無い。現在でも新たなスタイルや概念を伴う話がつぎつぎに生まれ、楽しまれている。
その理由は? そう、霊たちは生きているのだ。いつまでも、みんなの心の中に。