「大企業とベンチャーどちらを選ぶべきか」で見落としがちな視点――スペックや環境よりも重視すべきこと

インタビュー

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自分なりの解決法が見つかる 前向きに悩む力

『自分なりの解決法が見つかる 前向きに悩む力』

著者
午堂登起雄 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
哲学・宗教・心理学/心理(学)
ISBN
9784534058072
発売日
2020/09/30
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

「大企業とベンチャーどちらを選ぶべきか」で見落としがちな視点――スペックや環境よりも重視すべきこと

[文] 日本実業出版社

「誰もが知っている大企業で働きたい!」

「本当に優秀な人材はベンチャーに行くべきだ」

「大企業とベンチャー企業、どちらを選ぶべきなのか?」は誰もが一度は考えたことある問題でしょう。悩んでもなかなか正解が見つからないこの問題の考え方を『前向きに悩む力』の著者・午堂登紀雄さんに聞いてみました。

大企業とベンチャー、結局どちらを選ぶのが正解?

転職や就職といった人生の岐路において、「どちらを選ぶべきか」で迷い悩む人は多いと思います。

私の経験上、結論は「どちらを選んでも大差ない」です。

どちらを選んだとしても、うまくいく人はそれなりに満足度の高い結果になるし、うまくいかない人はどちらを選んでもやはりそれなりの結果にしかならない。だから仮に迷ったとしも、「そこで自分は何をするのか」「自分がやりたいことができるのか」という主体的な意識と、「ワクワクするか」という直感で選ぶしかないと考えています。

「なにか起こるかも」ではなにも変わらない

迷う人は、「環境が自分を変えてくれるのではないか」「環境が自分に何かを与えてくれるのではないか」「(根拠はないけど)何かいいことがあるのではないか」と、外部環境に依存している可能性があります。

たとえば、「大手企業に行けば、何かすごいプロジェクトに任命されて、大きな仕事ができるかもしれない」とか、「ベンチャーに行けばなんでも任せてもらえて、若くして役員に抜擢されるかもしれない」など、「他人が何かしてくれるかもしれない」という根拠のないスケベ心です。

これはキャリアに行き詰まった人が、海外留学やインド旅行をするメンタリティに似ています。「そこに行けば変われるんじゃないか」という、これまた根拠のない変身願望です。

でも結局、そのときはいったん逃避できたものの、帰国して現実に引き戻されたとき、自分と自分を巡る環境は何も変わっていないことにがく然とします。

それどころか、明確な目的や戦略を持たず勢いに任せて行ってしまったため、一貫性のない旅行や留学であることが人事部の人間や面接担当者にはバレバレで、むしろ再就職の足かせになったりする危険性すらあります。

「キャリアコンセプト」を明確にする

そうならないよう、キャリアの選択で迷ったら、まず自分の「キャリアコンセプト」を明確にしておく必要があります。

たとえば、いったい自分は何をしているときが充足感を感じるのか。その適性を活かしてどのような仕事をするのが納得できそうかを明らかにすることです。むろんそれは知識や経験で変遷していくものですが、その時々で考え続ける必要があります。

たとえば私の場合、詳細は後述しますが、最初の就職で失敗したのは、「とりあえず日商簿記検定1級を持っているから、就職するなら会計事務所かな」という安易な選択をしたことも理由としてあると思います。

つぎの転職では、みじめさを払しょくするために「優秀な人が行かない未完成の会社」を選び、そのつぎの転職では、「とにかく自分を徹底的に鍛えられる仕事」を選びました。

まずは「自分の性格」を知ることから

同時に、自分の性格と傾向をよく知り、環境が自分に何かをしてくれると期待するのではなく、どういう環境であれば自分の素のままで仕事ができるかを考える。たとえば私の場合、人見知りで自己主張が苦手なので、人間関係が濃くなりがちな少人数ベンチャーよりも、一人ひとりの個性が埋没しやすい大企業のほうが過ごしやすかったりします。

中小零細企業では人間関係が固定しがちですが、私のように対人関係でつまずきがちな人は、異動などがあり人間関係がリセットされやすい環境のほうが合っていました。そういうキャリアコンセプトを持たないと、自分の価値観や特性に根差した職業選択ができなくなります。

すると、会社名とか給料とか、ネームバリューや雰囲気などの他人の価値観で選んでしまうことになりかねません。大学生を対象にした「就職したい会社ランキング」が典型例で、なんとなく有名で、周囲に自慢できて、福利厚生が手厚くて、安定していて……みたい選び方です。

それこそまさに就職ではなく「就社」であり、やりたくもない仕事をさせられ不満を持ち、3年以内で退職、みたいになってしまう。環境やスペックにこだわった職業選択ではいずれ行き詰まる可能性が高いのです。

向いてない仕事×パワハラで「ウツ」寸前に……

などと偉そうに言っている私ですが、もちろん私も迷い悩んできました。大学時代に見つけた目標である「公認会計士」の試験は不合格、受験が4年生の夏だったこともあり、就職活動にはすっかり乗り遅れ、就職先が決まらないまま卒業。卒業後はとりあえずフリーターを続けましたが、私がバイトを選ぶ基準は、「ひとりで黙々とできる仕事」や「人間関係がまっさらな仕事」でした。前述のとおり、人見知りで引っ込み思案ゆえに、対人関係が苦手だったからです。

そのため選んだのは「ビル清掃」とか居酒屋の「新店オープニングスタッフ」でした。前者はひとりで黙々ででき、後者はすでに出来上がった人間関係のなかには入れないと思ったからです。

そしてようやく会計事務所に就職するわけですが、入社してすぐ計算ミスを繰り返すようになり、何度確認してもミスがなくならない。結局は早々と「使えねえヤツ」という評価を受けるようになってしまいました。そもそも自分はわりと雑な性格なので「1円を合わせるような細かい業務」は向いてなかった。

ミスをしては怒られ、終業後も居酒屋に呼び出されては説教の毎日。ストレスで朝が起きられなくなり、遅刻してさらに怒られる始末。私は生気を失い口数も少なくなり、ウツ寸前でした。

そして、1年後、またミスして所長と上司に呼び出され「どうするんだ!」と問い詰められ、「はい……辞めます」と力なく答えることしかできませんでした。

自分が納得する仕事なら不安でも頑張れる

つぎに選んだのはコンビニですが、面接を受け3社に受かりました。

ではどこにするか。

最も後発の上場二部企業(のちに一部上場)を選びました。なぜなら、最後発ゆえに業務手順などが十分に固まっておらず、自分でも何か貢献できるんじゃないか、前回のみじめさを払しょくするには、完成された仕事で回っている会社ではなく、仕事が発展途上の企業のほうが、生き残れるんじゃないか、という発想です。

この選択はビンゴで、がんばればがんばるほど結果が出て、評価されるようになりました。

そしてつぎの転職先に選んだのは経営コンサルティングの世界。いくつか受かりましたが、自分のキャリアがどうとか、年収がどうとかではなく、自分を鍛えるには戦略系しかないと、年収ダウンでも階級は新卒と一緒でもそこを選びました。

入社当時はなかなかついていけず、いつクビになるやらと不安でしたが、それでも歯を食いしばって続けるうち、それなりの評価をいただけるようになり、退職したときの年収は入社時の2倍になっていました。

もちろん、コンビニにしろコンサルにしろ、別の会社を選んでいたらなら、それはそれでまた違った結果に(たとえばいまよりも大成功とか)なったかもしれませんが、同時に別の道を選ぶことはできないのでわかりません。

しかし、どの道を選んだとしてもそれなりにやっただろうなあと思います。なぜなら、どの仕事を選んでも自分が納得できる仕事をするだろうと思うからです。つまり冒頭の話に戻りますが、「たいして変わらない」というのは、自分の適性を活かし納得する仕事をすれば、それなりに幸福や充足を感じるので結果オーライになる、というわけです。

日本実業出版社
2020年10月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

日本実業出版社

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