村岡俊也著「新橋パラダイス」

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新橋パラダイス 駅前名物ビル残日録

『新橋パラダイス 駅前名物ビル残日録』

著者
村岡 俊也 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163912219
発売日
2020/09/14
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

村岡俊也著「新橋パラダイス」

[レビュアー] 橋本倫史(ノンフィクションライター)

 東京・新橋駅の近くに、二つのビルがある。新橋駅前ビルとニュー新橋ビル、いずれも戦後の闇市に端を発する歴史あるビルだ。竣工(しゅんこう)から半世紀ほど経(た)った今、いずれも再開発が計画されている。

 ニュー新橋ビルの地下にはゲームセンターがある。扉の隙間から、休憩室の様子が覗(のぞ)く。白髪の混じる従業員の姿に年季を感じる。きっとこのゲームセンターにも長い歴史があるのだろう――そんな印象を抱いたとしても、わたしたちはそのまま立ち去ってしまう。だが、著者は扉の向こうに佇(たたず)む店主たちに話しかけ、ビルの中で紡がれてきた日々を書き記す。ジューススタンドに金券ショップ、洋食屋にマッサージ店。戦後のにおいが残るビルを、魔窟として仰々しく書き立てるのでなく、土地に流れてきた時間を、そこに暮らしてきた人たちの言葉を、著者はやさしく掬(すく)い取る。ビルが解体されたあと、ここに綴(つづ)られた人たちはどこへ行くのだろう。(文芸春秋、1600円)

読売新聞
2020年10月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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