【聞きたい。】上杉隼人さん 『MARVEL(マーベル) 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密』 苦しくても夢追いかける

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【聞きたい。】上杉隼人さん 『MARVEL(マーベル) 倒産から逆転No.1となった映画会社の知られざる秘密』 苦しくても夢追いかける

[文] 喜多由浩(産経新聞社 文化部編集委員)

 翻訳者として、原書に多くの要素を加えて日本語版を完成させた。

 スパイダーマン、アイアンマン、超人ハルク、X-MEN、チームで活躍するアベンジャーズシリーズ…。世界中で大ヒットしている米「マーベル(スタジオ)」映画。今や総興行収入、約2兆3000億円をたたき出す、そのキャラクターは、1939年発刊の雑誌、マーベル・コミックで描かれてきたものだ。なぜ数十年にもわたって人気を保つことができたのか?

 「いつの時代もヒーローは求められていますが、マーベルのキャラクターは(ライバルDCコミックの)スーパーマンのような完全無欠のヒーローではありません。人間的な弱さや葛藤を抱えているのです。そんな彼らが時には自分の生命までなげうち、敵と戦う姿が感動を呼ぶのでしょう」

 今日の成功に至るまでのマーベルの道のりも、山あり谷あり。96年には一度、破産もしている。

 「マーベルの主要なキャラクターの多くは60年代に誕生しています。コミックが次第に売れなくなってテレビ、映画への進出を目指すのですが特撮技術が未熟だった時代には実写化もなかなか難しかった。経営陣も“金もうけの道具”としか見ていませんでした」

 浮上のきっかけは、映画の独自制作に踏み切った「アイアンマン」(2008年)だった。周囲の反対を押し切って主演俳優に抜擢(ばってき)されたロバート・ダウニーJr.は、実人生も波瀾(はらん)万丈。「人間的な弱さ、葛藤」を抱えたマーベルのキャラクターを体現する人物として、そこもまた観客に支持されたのである。

 翌09年には、エンターテインメント界の巨人・ディズニー社の傘下に入り、制作側のマーベルと「ウィンウィンの関係」を築いてゆく。「苦しい時代にあってもマーベルは夢を追いかけることを忘れず、努力を怠らなかった。失敗から立ち直る、経営のメソッドとしても参考になると思いますね」(チャーリー・ウェッツェル ステファニー・ウェッツェル著/すばる舎・1700円+税)

 喜多由浩

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【プロフィル】上杉隼人

 うえすぎ・はやと 翻訳者、編集者。昭和40年、群馬県出身。早稲田大教育学部英語英文科卒、同専攻科修了。マーベル関係の訳書も多い。

産経新聞
2020年11月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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