“テレビの笑い”を問う異色の女性コンビが抱く“違和”と“疑問”

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  • 夢で逢えたら
  • 阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし
  • 不細工な友情

書籍情報:openBD

“テレビの笑い”を問う異色の女性コンビが抱く“違和”と“疑問”

[レビュアー] 北村浩子(フリーアナウンサー・ライター)

 相方の休業でピンになった芸人の真亜子、キー局の社員アナからフリーになったもののパッとしない佑里香。ある番組でコンビを組むことになった二人は、最初はぎくしゃくしていたものの次第にお互いの「味」に気づいていき――

 吉川トリコ『夢で逢えたら』は、タイプの違う女性同士が友情を育むという安定の枠組みの中で、猛然と暴れてみせる小説だ。共演者をぶった斬る過激なキャラクターで崖っぷちから生還した真亜子と、求められる「女子アナらしさ」を引き受けてきたふんわりおっとりの佑里香が、テレビ業界の決まり事を外れてみせる。芸人とアナウンサー、扱われ方は違っても、あからさまな男女の非対称性に違和と疑問を抱いていたのは同じ。かつて佑里香に手を出そうとした大物MCの看板番組で、二人は憤りを爆弾に変える。

 慰め合うのではなく、然るべき相手に対してきっちり落とし前をつける。そこが格好いい。二人をアシストする仲間の存在も頼もしい。シスターフッドを痛快に感じながら、テレビが誰も傷つけず貶(おとし)めない笑いを提供することはできるのか、という問いが含まれていることにも気付かされる。

 今、それを体現している一人(一組)が阿佐ヶ谷姉妹だろう。六畳一間のアパートでの同居生活を綴った『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』(幻冬舎文庫)は、謙虚さと温かさ、のどかさと真面目さで笑わせるという、実は高度な技が(そうとは見せずに)落とし込まれた一冊。初めて書いたというそれぞれの短編がびっくりするほど達者で、素朴で優しい感動がじんわり胸にひろがる。

 女性芸人のリレーエッセイと言えばオアシズの二人、光浦靖子大久保佳代子『不細工な友情』(幻冬舎文庫)も傑作だ。子どもの頃からの付き合いなのに、なにかお互いの肝心なところが分かっていないような手探り感漂うやりとりにくすりとさせられる。自尊感情と承認欲求の間を行き来するやっかいな心、冴えない私生活の開帳合戦の裏に、相手の存在をいとおしむ気持ちが隠れている。

新潮社 週刊新潮
2020年11月12日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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