大人のためのうんこドリル

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ウンコはどこから来てどこへいくのか

『ウンコはどこから来てどこへいくのか』

著者
湯澤 規子 [著]
出版社
筑摩書房
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784480073303
発売日
2020/10/09
価格
924円(税込)

書籍情報:openBD

大人のためのうんこドリル

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 国会なら予算委員会と決算委員会。セックスなら前戯と後戯。AがBを経てCに変わるという流れにおいて、Aは騒がれるのにCについてはひっそり……という例はよくあって、それは食物が消化を経て大便に変わる場合も同じ。グルメ大路は老若男女で賑わう一方、スカトロ小路に集うのは子供と数奇(すき)者くらいです。

 とはいえ実は相当数の大人だって心惹かれるのが糞便譚。活字の世界には昔から佳作秀作傑作の系譜が連綿とあって、先月もまたひとつ、新たな出物あり。

『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』は、サブタイトルにもあるとおり、人文地理学の研究者による「人糞地理学ことはじめ」。古代には自然や大地、その恵みである食物と不可分に扱われていたヒトのクソが、穢れの象徴にもなりつつ農業を支える貴重な資源にも化けて、しかし現代ではただ汚物として隔離されるばかり……その転変が、さまざまな史料・資料によって可視化されていく過程が、まずは眼から鱗。

 が、それだけならよく書けた学者新書。『7袋のポテトチップス』や『胃袋の近代』の著者でもある湯澤規子は、口から入れるモノを語るときと同じ熱さ深さ広さ、そして楽しさでもって、肛門から出るモノを語る。レヴィ=ストロースからボーヴォアール、ゴーギャンまでを引いてきて、たとえば「ウンコは汚物に生まれるのではない、汚物になるのだ」なんて真顔で言ってみせる“話芸”がまた、大きな読みどころなのよ。

新潮社 週刊新潮
2020年11月12日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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