『許すチカラ』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
“離婚回避できた理由”に残るモヤモヤ感 自己矛盾すら垣間見え…
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
出産直前に他の女性と逢瀬を重ねていた夫・宮崎謙介。育休取得を訴えイクメン宣言していた衆議院議員が、妻の臨月にゲス不倫。
およそあらゆる女性から蛇蝎の如く嫌われる行為をした彼を、なぜ許せたのか。今も彼と夫婦であり続ける著者が、騒動を振り返り「許す」ことで得た新しい幸せの形について語った本書。
浮気を絶対に許さないという女性も多い中、著者が夫と再出発できた理由を拾い上げてみると。「ウソをつかず、全て正直に話してくれた」「騒動後、議員の椅子に拘らず、信念を持って辞職した」「築いたものを全て失った後、父として夫として生き直してくれた」等々。うーん。どれも他人からすると、膝を打つほど納得できる話でもなく。人それぞれとしか。
それより「料理は彼の担当。洗濯は私。掃除はそれぞれできる時に」という家事分担の部分が、関係修繕の大きな「ファクターX」のような気が。料理好きで家のこともマメにやるという宮崎謙介。毎日の家事、特に食事作りを進んでやってくれるパートナーというのは、働く母親にとって、ある意味天下無双の存在といっても過言ではない。ま、「そこが決め手です」とは一言も書かれていないが。
妻から見ると、常に明るく、仕事も順調で、イケイケだけどマヌケでほっとけないという宮崎謙介。読み進むうち、著者の「許すチカラ」よりも、彼の「許されるチカラ」の方がどんどん強く感じられるように。男も愛嬌ってことですね。
そもそも、浮気や不倫とは、夫婦の間の問題で、周囲がとやかく言うことではない、というスタンスだという著者。それは確かにそうではあるが。そう書いた次のページから、名前こそ明記してないが、鈴木杏樹や東出昌大の不倫について延々と物申しているという自家撞着はどうしたことか。「もし私が同じ立場だったら、許せたかどうかわかりません」って、とやかく言わないスタンスじゃなかったのか。わかっちゃいるのに首を突っ込まずにいられない、「不倫ネタ」というものの蜜壺っぷりが、意図せずあぶり出された形に。まだまだ週刊誌は売れるなこりゃ。