モテないけど生きてます ぼくらの非モテ研究会編著 青弓社/アルコホーリクス・アノニマスの歴史 アーネスト・カーツ著 明石書店

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モテないけど生きてます

『モテないけど生きてます』

著者
ぼくらの非モテ研究会 [著、編集]
出版社
青弓社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784787234766
発売日
2020/09/28
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

アルコホーリクス・アノニマスの歴史

『アルコホーリクス・アノニマスの歴史』

著者
アーネスト・カーツ [著]/葛西 賢太 [訳]/岡崎 直人 [訳]/菅 仁美 [訳]
出版社
明石書店
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784750350769
発売日
2020/09/20
価格
3,850円(税込)

書籍情報:openBD

モテないけど生きてます ぼくらの非モテ研究会編著 青弓社/アルコホーリクス・アノニマスの歴史 アーネスト・カーツ著 明石書店

[レビュアー] 鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 弱さを、ありのまま受け入れる。その難しさと創造力を、この2冊から確かに受けとった。

 『モテないけど生きてます』は、「非モテ」を「名状しがたい男性たちの生きづらさを語りだすための呼び水」として曖昧なまま定義せずに「研究」する会の異色で重要な経過報告だ。20代から30代の男性が集まって語るとなったら恨み節満載か、との予感は心地よく裏切られる。

 苦しさを、ありきたりの議論に当てはめず、自分たちの言葉によって語り、仲間たちと共に助け方を探る。当事者研究という手法によって彼らは、自慰行為に伴う罪悪感、DV加害者としての男性、「人を頑張ってバカにしてしまう病」といった、さまざまな弱さをさらけだす。

 こうした「お互いの弱さを開示して知らせる場で分かちあわれる正直さ」は、「アルコホーリクス・アノニマス」(AA)に通じる。

 「無名のアルコール依存症者」と直訳できるこの共同体には、日本を含め世界180か国で回復を目指す210万人以上が参加している。『アルコホーリクス・アノニマスの歴史』は司祭だった著者が依存症治療の後、ハーバード大での博士論文を書籍化した41年前の原著を訳した浩瀚な本。葛西賢太、岡崎直人、菅仁美の各氏による、専門性を活かした達意の翻訳が光る。重厚な読み応えだ。

 1935年の始まりから、創始者の書簡などの資料を基に詳細に描き、米国史や宗教思想史にも位置づけ、多分野の関心に見事に応える。

 原題「神ではないこと」は、だからこそ他者が必要だ、とのAAの思想を端的に示す。その思想は、酒なしの生活よりも深い信仰と洞察を必要とする。人間には限界があるがゆえに全体として存在できるのであり、フェローシップという交流や集まりが治療を着実に支えてきた。

 二つの共同体は無名の個人たちが営む。弱さに居直らず、居丈高にもならず、他者といかにつながるのか。そのカギが、この2冊にある。

 ◇Ernest Kurtz=1935~2015年。ポーランド系米国人。著書に『恥と罪』など。

読売新聞
2020年11月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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