道教思想10講 神塚淑子著

レビュー

10
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道教思想10講

『道教思想10講』

著者
神塚淑子 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784004318484
発売日
2020/09/19
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

道教思想10講 神塚淑子著

[レビュアー] 読売新聞

 本書は、老子から始まり、古代から現代までの道教の歴史を分かりやすく示す。

 道教では、道・気・無など、抽象的な原理が多いが、いずれも説明によって腑(ふ)に落ちる。無名、無為など「無」が頻繁に登場するが、東洋の無は破壊性を持たず和んでいる。

 本書は、老荘思想の理論の説明だけでなく、中国の「雑にして多端」なる道教の具体的諸相を丁寧に描く。民衆への浸透の深さは予想以上だ。

 神格による救済と自己救済という枠組みは重要である。養生術は自己救済の基本である。神格による救済は世直しにもつながる。「承負」とは道に背いた罪が次世代に引き継がれることだ。承負が極に達すると天の怒りが爆発する。その発想は、黄巾の乱を引き起こすなど、歴史的に大きな影響を及ぼした。

 仙術、呪符など迷信に充(み)ちた民間呪術に見えて、さにあらず。倫理の応報と人々の平等と健康管理、生と死の理解と意味づけから国家統治まで包含する幅広い思想形態だ。

 現代の環境汚染への方針、未来に向けた倫理思想など、西洋東洋を問わず、傾聴すべき論点を道教は含んでいる。(岩波新書、860円)

読売新聞
2020年11月1日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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