『大学生活、大丈夫?』
書籍情報:openBD
大学生活、大丈夫? 梶谷康介著
[レビュアー] 読売新聞
大学は、すべての学生が楽しく学び、友と親しく語り、明るく生活する場であってほしい。しかし、現実は残念ながらそれほど甘くない。
学生のメンタルヘルスが相当に重要な問題である。なので、大規模な大学の場合、大学の「保健室」とでもいうべき「保健管理センター」には精神科の医師が配置されている。九州大学でその職にある先生が書かれたのがこの本だ。
大学生の平均的生活、心を病む理由、大学生がかかる精神疾患へと話が進む。そこまでが基礎編で、それに続く、精神を患った時の対処法とメンタルヘルスを損なわないための予防法の応用編である。
どの項も簡潔だがエビデンスに基づいてじつにわかりやすく書かれている。意外な事実も多くて、とても役に立つ。
現時点で特に気になるのは心を蝕(むしば)むキャンパスリスクだ。新型コロナで制限された生活がメンタルヘルスを脅かす大問題になりつつある。
大学生の家族向けにと書かれた本であるが、なにも家族だけに限らない。学生に日常的に接する大学教員にとってこそ必読の1冊になっている。(九州大学出版会、1800円)