ミュージアムを知ろう 横山佐紀著

レビュー

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ミュージアムを知ろう 中高生からの美術館・博物館入門

『ミュージアムを知ろう 中高生からの美術館・博物館入門』

著者
横山佐紀 [著]
出版社
ぺりかん社
ISBN
9784831515667
発売日
2020/08/24
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

ミュージアムを知ろう 横山佐紀著

[レビュアー] 尾崎真理子(早稲田大学教授/読売新聞調査研究本部客員研究員)

 ミュージアムの存在意義が大きく変わりつつある。

 古代ギリシャのムセイオン、王侯貴族の「驚異の部屋」から、フランス革命後は市民も興じる「万国博覧会」へ。本書はまず、興味深い発展史を振り返る。時代が「見たいもの」、権力者が「見せたいもの」が常にそこへ結集した。帝国主義下では辺境の人間を展示する空間まで出現した。

 そして今、時代は果てしなく複雑だ。国内外の美術品を移動させての大規模な企画展が盛況だが、大英博物館で昨年催された日本の漫画展を疑問視する声が現地で噴出するなど、芸術、歴史、宗教、性差などの価値観がまともにぶつかる場ともなってきた。

 だからこそミュージアムは<自分とは異なる新しいものの見方を知る場所>、様々な見方をする人が<認められる空間>でなければ、と著者は説く。戦争の負の遺産、人種、性的マイノリティー……。多様な社会を映し出し、相互理解へ向けて議論を呼び込む公開の場へ。変化の潮流が豊富な事例から示される。

 ハンディーな入門書ながら、中身は濃厚。本書によって展示の奥行きもぐっと増す。(ぺりかん社、1600円)

読売新聞
2020年11月8日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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