【気になる！】文庫『誰？』

　大手企業を定年退職後、妻を亡くし、都内で１人暮らしの沢田は、親子ほど年の離れた晴美と知り合う。薄幸で病弱な晴美を案じ、金銭的な援助も考えるようになるが、ある日、晴美を別の名前で呼び、話しかける中年女性が現れ、沢田の心中に違和感が広がる。

　孤独のにおいを漂わせる善人につけ入り、相手が心を許すような女を演じ、「息するように嘘をつく」。偽りまみれの悪女による巧妙な仕掛けと、破滅への道が緻密に描かれ、人の底知れぬ深い闇に背筋が凍る。

　終盤の展開にページをめくるスピードも加速。意外な事実が判明するエピローグまで読み応え十分。（明野照葉著、徳間文庫・７７０円＋税）

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• 誰?
• 明野照葉

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