【気になる!】文庫『ゴースト』
[レビュアー] 産経新聞社
東京・原宿の風格ある洋館で大学生が出会う少女、娘、初老の女との不思議な時間(「原宿の家」)。戦災孤児で事故死した後、何度も幽霊となってこの世に現れるケンタが、育児放棄された少女きららのもとにやってくる(「きららの紙飛行機」)。出征経験があり、少しぼけた曽祖父を時々訪れる「リョウユー」の正体にひ孫の千夏が迫る(「亡霊たち」)…。
亡くなったものたちの心の叫びに耳を傾ける「7つの幽霊連作集」。最終話「ゴーストライター」のライターと幽霊のどこかユーモラスだが悲哀漂う会話にしみじみとし、死者への思いを新たにする。(中島京子著、朝日文庫・640円+税)