政財界を震え上がらせた元東京地検特捜部長が、32年にわたる検事人生を退官から約10年を経て振り返った。仕事への厳しさで有名で捜査対象のみならず、後輩検事からも畏怖の念を抱かれた著者。手がけた事件は、中尾栄一元建設相の受託収賄事件、日歯連ヤミ献金事件など枚挙にいとまがない。
本書では、当時の裏話に加えて近年の裁判所による保釈率の増加の問題などにも鋭い意見を述べる。古巣の特捜部には「謙虚に、独りよがりの正義を振りかざしてはならない」とメッセージ。
厳しさの背後にあった優しさを垣間見ることができる著作だ。(人間社・1500円+税)
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2020年11月22日 掲載
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