コロナ禍で高校演劇部は何を考える 臨場感に満ちたドキュメンタリー

レビュー

9
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舞台上の青春 高校演劇の世界

『舞台上の青春 高校演劇の世界』

著者
相田冬二 [著]
出版社
辰巳出版
ジャンル
芸術・生活/演劇・映画
ISBN
9784777825233
発売日
2020/11/04
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

コロナ禍で高校演劇部は何を考える 臨場感に満ちたドキュメンタリー

[レビュアー] 篠原知存(ライター)

 人と人が集まってつながり合うことが前提の演劇という表現行為は、コロナ禍による分断とどう向き合っていけばいいのか。著者が取材を始めた時、そんなテーマは想定されていなかっただろう。しかし、演劇が「3密」の代表格のように危険視された2020年。高校演劇の取材を続けていくうちに、芸術文化の価値や可能性を問い直す思索は、本書を貫く通奏低音となっていく。

〈シリアスではない。明るい。むしろ、そうした過酷な状況を笑い飛ばしながら、芝居は進んでいく。「まさに演劇!」という、痛みを緩和する、魔法の言葉を駆使しながら、逆境を乗り越えていく〉

 感染拡大前に著者は北海道・富良野高校の舞台をこう評していた。不便さなど個別の状況を指す「逆境」はその後、意味を変える。プロの舞台も上演中止が相次ぎ、高校演劇全国大会もウェブ開催に。そんな状況下で大会出場校など有力校の演劇部を訪ね歩き、顧問や生徒たちがどんな活動をしているのか、どんな思いで取り組んでいるのかを聞き書きしたドキュメンタリーは、臨場感に満ちている。その内容は、コロナ禍のみならず、さまざまな苦難に対処するための手引書にもなっている。人生の支えになりそうな演劇的思考法や実践例が次々に紹介される。

 特筆したいのは、高校演劇の教育的な側面をしっかりと解説してくれていること。ある教諭が言う。

〈教育ってそもそも時間のかかることだから“即効です!”なんてものはあまりない。でも学校教育で即効と思えるものを並べていくと、演劇はベスト3に入るんじゃないか。いま、役に立つ。すぐに役に立つ〉

 他者を理解し、自己を制御し、関係性を成り立たせて、全体の調和を探る。演劇は生きる術を学べる場。もしかすると「魔法の言葉」だって習得できる。文化祭や学芸会の中止を検討している学校関係者の皆さんも、いますぐご一読を。

新潮社 週刊新潮
2020年12月3日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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