各地のおいしい食と酒の情報が盛りだくさん!「おひとり様ロードノベル」の続編が誕生『ひとり旅日和 縁結び!』

レビュー

2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ひとり旅日和 縁結び!

『ひとり旅日和 縁結び!』

著者
秋川 滝美 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041099803
発売日
2020/11/30
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

各地のおいしい食と酒の情報が盛りだくさん!「おひとり様ロードノベル」の続編が誕生『ひとり旅日和 縁結び!』

[レビュアー] 高倉優子(ライター)

書評家・作家・専門家が《今月の新刊》をご紹介!
本選びにお役立てください。
(評者:高倉 優子 / ライター)

 前作から約1年。シリーズ続編となる『ひとり旅日和 縁結び!』が発表された。「待ってました!」と叫びたい気分だ。

 今シリーズは、ドラマ化もされ大人気の「居酒屋ぼったくり」シリーズでおなじみ、秋川滝美さんが描く、読めば「お腹が鳴り、旅に出たくなる」おひとり様ロードノベル。

 主人公の日和は、事務用品を扱う会社で働く20代の会社員。「人見知り女王」と呼ばれるほどの人見知りで、仕事の要領もいいとは言えない彼女。が、会社の頼れる先輩で、旅の達人でもある麗佳の助言を得て、前作では国内5つの街を旅する。その旅での経験を通じて、少しずつ自信をつけ、公私ともにゆるやかな成長を果たす――というところで、前作は幕を閉じた。

 その後を描く今作でも、行き先は国内5つの観光地。5話からなる連作集だ。目次をご紹介しよう。「第一話 函館 ご当地バーガーとウニ丼」「第二話 房総 メロンパンと城の名の酒」「第三話 大阪 たこ焼きと肉吸い」「第四話 出雲 出雲そばと鯛飯」「第五話 姫路えきそばとひねぽん」。メロンパンやたこ焼きといったメジャーなものから、肉吸いやひねぽんといった、ご当地感の強いものまで、なんとも興味をそそられる。

秋川滝美『ひとり旅日和 縁結び!』
秋川滝美『ひとり旅日和 縁結び!』

 大人気の遊園地などには目もくれず、食いしん坊街道まっしぐら。日和の旅は、食べたいものをベースにして構成される。それらの料理や酒をどのように味わうか――。もちろんそこが読みどころではあるのだが、目的地にたどり着くまでの寄り道や、彼女の心の揺れが読んでいて楽しいし、目次には書かれていないご当地グルメや、地元の人たちとのゆるやかな出会いも魅力なのだ。

 たとえば函館では、レアな活きイカとは出合えなかったが、他の客を真似て注文した朝獲れイカの甘さに感動し、「獲ってから数時間後のこの甘みこそ、産地ならではの味なのかもしれない」と納得する。また、関西出身の友人から聞いた「熱々を食べているうちにしぼみ始めたたこ焼きの旨さ」を確かめるため出かけた大阪で、本場の味を堪能。さらに、ふと思いついてなんばグランド花月でお笑いライブを観て、最後には「イカ焼きの名店が本当においしいか確かめてきてほしい」という母からの指令まで遂行してくるのだ。

 立てた計画通りにいくこともあれば、まったく違う道をたどることもある。つくづく、食も人も一期一会であり、人生と旅は似ているなとも思う。

 道中、日和は笑っていることが多い。ほくそ笑んだり、苦笑いのこともあるが、しゃべりかける相手がいないひとり旅だからこそ、頭の中で自分と対話し、感情をフル回転させているのだろう。その様子に読み手も楽しい気分になってくる。やっぱり複数人での旅行とは違う楽しみ方が、ひとり旅にはあるのだと実感する。

 このご時世、旅に出るのをためらっている人も多いだろう。もうしばらく自粛しようと考えている人にこそぜひおすすめしたい小説だ。行ったつもりになれるし、いつか行く時の参考にできるはずだから。

 最後に忘れてはならないのが、日和の恋の行方だ。前作で出会い、麗佳の同級生だと判明した吉永蓮斗と待望の再会を果たすが、距離はなかなか縮まらない……。ああ、じれったい。でも初々しくて、キュンとする。

 縁結びの神様として名高い「出雲大社」に詣でた日和に、ご利益はあるのか!? そのあたりにも注目して読んでほしい。

 グルメと恋のさじ加減が絶妙だし、お仕事小説としても楽しめる。こんなに盛りだくさんな味わいの小説はなかなかないと思う。ああ、すでに続編が待ち遠しくて仕方ない!

▼秋川滝美『ひとり旅日和 縁結び!』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322006000156/

KADOKAWA カドブン
2020年11月27日 公開 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

  • このエントリーをはてなブックマークに追加