性からよむ江戸時代 沢山美果子著

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

性からよむ江戸時代――生活の現場から

『性からよむ江戸時代――生活の現場から』

著者
沢山美果子 [著]
出版社
岩波書店
ISBN
9784004318446
発売日
2020/08/21
価格
902円(税込)

書籍情報:openBD

性からよむ江戸時代 沢山美果子著

[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)

 国立歴史民俗博物館で開催中の「性差(ジェンダー)の日本史」展は、多様な研究成果を提示し興味深い。中でも近世には性差が変容し、家や社会が男中心化したという。

 本書は、近世における普通の女と男の性の営みを希少な史料からさぐり、性と社会・国家の関係の実像とその歴史的特徴に斬り込んでいる。

 たとえば、52歳で若妻と結婚した俳人小林一茶は、妻との交合の詳細な記録を日記に留(とど)めた。性交を忌む禁忌も意識しつつ、家を守るため交合を重ねる夫妻の性意識がうかがえるが、もうけた四子は皆早逝(そうせい)した現実を紹介する。

 米沢藩の山村で起きた離別後に妻が産んだ子の所属をめぐる争いでは、嫁には労働と生殖が求められた。一方で藩は、出産を把握し、堕胎・間引きを禁じる人口増加政策をとったことが指摘される。

 幕府や藩は、村役人を介して婚姻・出産を管理し、家を存続させる性のみを認める性規範を広めた。他方公認の遊郭が展開し、出産とかけ離れた性売買の大衆化が起きた。

 男女共同参画が叫ばれる今日、男女の性や性差をめぐる歴史研究は、さらに必要であろう。(岩波新書、820円)

読売新聞
2020年11月22日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加