仰天のスピリチュアル本 カレンダー的フレーズ連発“その筋の専門家”への序章?

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

上を向いて生きる

『上を向いて生きる』

著者
宮本亞門 [著]
出版社
幻冬舎
ISBN
9784344037021
発売日
2020/10/08
価格
1,430円(税込)

書籍情報:openBD

仰天のスピリチュアル本 カレンダー的フレーズ連発“その筋の専門家”への序章?

[レビュアー] 今井舞(コラムニスト)

 著名な演出家として知られる著者。実は対人恐怖症で中学で自殺未遂、高校ではひきこもりの経験が。更には海外で大事故に遭って生死を彷徨い、去年はテレビ番組により前立腺がんが見つかる。手術を経て復帰直後にコロナ禍となり、未曾有の事態の中、不安な日々を過ごしている人たちへ何か届けたい、と上梓されたのが本書である。

「多くの人が生きづらさを感じるいま、読めば心が軽くなる、至高のメッセージ」という出版社の惹句の通り、本書の「スピリチュアル本」としての完成度は高い。

 病を患い死の恐怖に苛まれている人には、「あんな心地いいところに行くのを怖がる必要はない」という臨死体験談が響くだろうし、失敗から立ち上がれないでいる人には、ひきこもり脱出経験からの「心の筋肉を作るトレーニングだと思えば」というキーワードが光明に。家庭の問題に悩む人は、父との確執を振り返り「神様が人生修行のために、最もやっかいな人たちを家族にあてがってくれた」という視点転換のくだりに開眼するだろうし。全ジャンル網羅の体験で、全ての悩める読者に即対応可。

 小節の区切りごとに大きく記されたまとめセンテンスがまた。「お休みは、停滞じゃない。人生を最高のものにするための、心の積み立て」なんていう、カレンダーになりそうなフレーズ連発。だからこういうカレンダー好きにとっては、たまらん本なんだろうな。こうした自身の言のみならず、「〇〇の言葉が、いつも私に希望を与えてくれる」と、ガンジー、リンカーン、アリストテレス、葛飾北斎等々、古今東西の著名人や、舞台やミュージカルのセリフなど、他人の言の葉を巧みに拝借して散りばめるあたり、さすが演出家の面目躍如。まあ時折「ブロックチェーン、それにビットコインなどで、個人の万能性が光り、全てに神が宿ることと同じように、共生の和が生まれるかもしれない」といったワケわからん記述で「八百万の精神」を思い出すよう説く支離滅裂も散見されるが。スピリチュアリストデビューとしてはまずまず成功を収めたといえよう。デビューする気があるのかどうかは知らないが。

新潮社 週刊新潮
2020年12月10日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • このエントリーをはてなブックマークに追加