『水と礫(れき)』藤原無雨著

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

水と礫

『水と礫』

著者
藤原無雨 [著]
出版社
河出書房新社
ISBN
9784309029306
発売日
2020/11/13
価格
1,540円(税込)

『水と礫(れき)』藤原無雨著

[レビュアー] 産経新聞社

 東京でドブ浚(ざら)いの仕事中に事故を起こし、砂漠に接する生まれ故郷に戻ってきた主人公クザーノ。心を苦しめる東京から蓄えてきた悲しい水分を抜くために、ラクダのカサンドルと砂漠を越える旅に出た。幻の町を目指して。

 物語はクザーノの灼熱(しゃくねつ)の旅を核としながら、父、祖父、息子、孫らのエピソードを交えつつ、無限ループのように繰り返す。大胆な構成が高く評価され、史上最多数の応募作から第57回文芸賞に選ばれた。

 コロナ禍で生きづらさが浮き彫りとなる今、新たな世界を希求する人々の気持ちにも寄り添う注目作。(河出書房新社・1400円+税)

産経新聞
2020年12月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク