【児童書】『たぷの里』藤岡拓太郎作・絵 大人も一緒に笑おう
[レビュアー] 渡部圭介
「きこきこきこ」「ごくごくごくごく」。そんな擬音とともに一輪車をこいだり、牛乳を飲んだりしている子供の頭を、突然現れた力士がたぷたぷのおなかで覆う。ほがらかな絵が並ぶが、ストーリーはなく、ただ笑わせるという不思議な絵本だ。
作と絵は、ツイッターなどにギャグ漫画を投稿している、大阪出身の漫画家・藤岡拓太郎さん。版元のナナロク社(東京)は個性的でキラリと光る本を生み出し続ける小さな出版社だ。
メディアに登場することがない藤岡さんだが、自身の公式ウェブサイトで本作に込めた思いを記す。目指したのは「子供も笑えば、親のほうもまともに読み聞かせができないぐらい笑ってしまう絵本」。その思いの先には「絵本っておもしろいな」という気づきへの期待がある。
本作の裏表紙に、対象年齢は「赤ちゃんから君まで」とある。難しいことは抜きに、大人も子供も一緒に笑おう。そんな時間の共有が、子供が本に興味を示す一助になりそうだ。(ナナロク社・1200円+税)
渡部圭介