【聞きたい。】春間豪太郎さん 『草原の国キルギスで勇者になった男』

インタビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

草原の国キルギスで勇者になった男

『草原の国キルギスで勇者になった男』

著者
春間 豪太郎 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103536116
発売日
2020/10/29
価格
2,090円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

【聞きたい。】春間豪太郎さん 『草原の国キルギスで勇者になった男』

[文] 本間英士

 ■ゲームのような現実の冒険

春間豪太郎さん

 若き冒険家が中央アジアのキルギスを馬で旅した冒険譚(たん)。己のスキルを頼りに、次々と困難を乗り越えていく旅の軌跡はドローンなどの最新機器で撮影されており、インターネットで公開されている。舞台こそ現実社会だが、まるでゲームの世界をみているかのような新感覚の読み応えだ。

 「(人気ゲームの)『ゼルダの伝説』のように、馬に乗り草原を冒険してみたかったんです。ビザなどの現実的な条件をクリアした国がキルギスでした」

 乗馬経験はなく、相棒の馬も臆病な性格。それでも一つ一つ乗馬技術を身につけレベルアップし、次の目的地へと向かう。親切な人との出会いがあれば、理不尽な悪意を向ける「敵」もいる。イヌワシとの共同生活に魅了される一方で、男性が見初めた女性を自宅に連れ去る現地の慣習「誘拐婚」などの文化の違いに直面することも。犬や羊など新たな仲間が加わっていく様子は、「まさに『リアルRPG(ロールプレーイングゲーム)』でした」。

 今でこそ「旅をするたびに自分が自由になっていく」と語る著者だが、かつては複雑な生育環境の影響で〈存在すること自体が罪〉という気持ちを抱えていた。それが大学生の時、行方知れずとなった友人を捜すためフィリピンを訪れ、冒険の虜(とりこ)になった。以後、モロッコでの徒歩野宿旅などを経験。これらの過去にも触れた本書は、一人の青年の成長物語でもある。

 語学に堪能で、冒険のために気象予報士などの資格を取得するなど努力を怠らない。「自らと向き合い、至らなさを痛感するのが冒険。楽しく刺激的な人生を送るには、理想の自分と現実の自分をすり合わせる作業が必要なんです」

 普段はIT関連の仕事をしつつ、次の冒険を見据える。「来年4月からまた大学に行き、ロボットの製作スキルを学びます。自分でデバイスを作れたら極地の冒険もしやすい。まだ見たことがない景色を見たいんです」(新潮社・1900円+税)

 本間英士

   ◇

【プロフィル】春間豪太郎

 はるま・ごうたろう 平成2年、京都府出身。著書に『行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』。

産経新聞
2020年12月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク