【気になる!】文庫『マスク』

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【気になる!】文庫『マスク』

[レビュアー] 産経新聞社

 頑健そうに見えるが、心臓が弱く、医者から「流行性感冒にかかったら、助かりっこありません」と言われた「自分」。折から猛烈な勢いで蔓延(まんえん)の流行性感冒におびえ、うがいやマスクで予防策を講じる。やがて感冒の脅威は衰えるが…。

 表題作は100年前のスペイン風邪流行下、著者自身の体験をもとに描かれた短編小説。マスクをめぐる心理描写、「極力外出しない」「毎日の新聞に出る死亡者数の増減に一喜一憂」などの状況はコロナ禍の現在にも通じ、興味深い。

 他に流行性感冒をめぐる作品など8編を収録。マスクを着脱するような帯と表紙の仕掛けも目を引く。(菊池寛著、文春文庫・620円+税)

産経新聞
2020年12月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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