<東北の本棚>不穏な事件 人生を左右

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向日葵を手折る

『向日葵を手折る』

著者
彩坂 美月 [著]
出版社
実業之日本社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784408537672
発売日
2020/09/18
価格
1,870円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>不穏な事件 人生を左右

[レビュアー] 河北新報

 山形の山間集落を舞台に、次々と起きる不穏な事件に巻き込まれた少年少女を描いた長編ミステリー。主人公みのりが紡ぐ友情と成長の物語でもある。
 父を亡くしたみのりは小学6年生の春、東京から母の故郷に引っ越してきた。祖母が暮らす小さな集落桜沢に母と身を寄せ、怜と隼人という同級生の少年と知り合う。
 集落では毎年夏に一大行事「向日葵(ひまわり)流し」がある。子どもの健やかな成長を願い、大輪の向日葵を灯籠に載せて川に流すのだという。ある日、向日葵流しのために小学校の花壇で育てられていた花が、何者かによって全て切り落とされてしまう。
 集落の子どもたちは子どもを殺す化け物「向日葵男」が犯人だとうわさするが、それ以来、みのりの周辺で死の危険を感じさせる出来事が続く。4年の歳月を経て向日葵男の目的と正体が明らかになった時、みのりと怜、隼人に人生の岐路が訪れる。
 父を失った悲しみから抜け出せないみのり、病弱な母を救おうとある決断をする怜、粗野な振る舞いの理由を両親に理解されず孤立する隼人。守られるべき存在のはずの子どもが、閉鎖的な集落の慣習や大人の都合に翻弄(ほんろう)されるのが切ない。苦難を乗り越えようと3人が必死に支え合う姿にエールを送りたくなる。
 著者の出身地だからだろう。生命が躍動する春や外界の音が遮断されるほど雪が降り積もる冬など、山形の自然の描写が丁寧で美しい。みのりたちの生きる世界が、リアルに目の前に浮かんでくる。
 著者は天童市生まれ。2009年富士見ヤングミステリー大賞準入選作「未成年儀式」(「少女は夏に閉ざされる」に改題)でデビュー。著作に「みどり町の怪人」など。(長)
   ◇
 実業之日本社03(6809)0495=1870円。

河北新報
2020年12月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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