【聞きたい。】笠井信輔さん 『生きる力 引き算の縁と足し算の縁』

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生きる力 : 引き算の縁と足し算の縁

『生きる力 : 引き算の縁と足し算の縁』

著者
笠井, 信輔, 1963-
出版社
KADOKAWA
ISBN
9784041099995
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

【聞きたい。】笠井信輔さん 『生きる力 引き算の縁と足し算の縁』

[文] 三保谷浩輝

 「なんでなんだよ」-。アナウンサーとして30年余勤めたフジテレビを昨年秋に退社した直後、血液のがん・悪性リンパ腫が発覚した。全身にがんがちらばった状態で失意のどん底に。12月に入院、抗がん剤を5日間投与し続ける治療を6回行い、今年4月末に退院。6月にがんが消えた状態の「完全寛解」となった。

 その「奇跡とも思える」歩みを振り返った本書。自身のインスタグラム、ブログなどSNSでの発信や、フォロワーのコメント、初公開の闘病日誌を引用し、病室での写真も掲載した。

 入院生活では、お見舞いの高級弁当や面白Tシャツを堪能し、「どうせなら明るく前向きに。そのほうが抗がん剤の効きもいいと先生も話してました」。一方で、「痛い」「しんどい」「つらい」ともがく姿も。そんな日々を支えたのが家族とSNSだった。

 ■がん闘病克服した生き方

 「泣き虫なのに、『大丈夫、治る』と叱咤(しった)激励してくれた」夫人や3人の息子たちとのやりとりは、家族の在り方も考えさせる。

 またSNSにはがん経験者や闘病中の人、家族からの体験談も多く寄せられ、コメントに救われた。「入院後半には『(がんの治療で)笠井さんを追いかけてます』という人も増えてきて、自分一人の生き死にじゃない。何としても治さなきゃって思いました」。

 さらに“生きる力”になったのが、東日本大震災の取材で得た考え方「引き算の縁と足し算の縁」。がん闘病は人生にとって「引き算」でも、「がんになったから生まれた(「足し算」の)縁や出来事もある。何かいいことがあれば、がんによる“貯金”だと考える。そういう発想の転換が困難を乗り越えていくヒントになるんじゃないか」。

 実際、病気以外のことで苦しんでいる読者から「自分もがんばろうと思った」との反響が届いているという。その生き方、このコロナの時代にもきっと通じるはずだ。(KADOKAWA・1400円+税)

 三保谷浩輝

   ◇

【プロフィル】笠井信輔

 かさい・しんすけ 昭和38年、東京都生まれ。62年、フジテレビ入社。「とくダネ!」など情報番組を中心に活躍し、令和元年10月からフリー。がん闘病後、今年8月に復帰。ブログは「笠井TIMES」。

産経新聞
2020年12月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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