『「自分」を殺すな、武器にしろ』
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自分の才能に気づくコツは? 自己認識に欠かせない6つのマインドセット
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『「自分」を殺すな、武器にしろ』(瀬戸和信 著、朝日新聞出版)では、冒頭に結論が明かされています。
それは、これからの人生を今よりもっと充実させたいなら、自分をもっと輝かせたいなら、「弱みを克服しようと努力するのではなく、自分の“才能のタネ”を自覚して強みに育て上げよう」ということ。(「はじめに」より)
弱みだけに意識を向けていたなら、やる気もやりがいも感じられなくて当然。苦手な部分をなくそうとする過程は、自分自身を弱らせ、回復力をも奪うということ。
だからこそ著者は、その時間を「強みをつくること」に投資すべきだと考えているというのです。
すなわち、「自分だけの武器」にできるような才能のタネを育てることに力を注ぐべきだという発想です。
人はそれぞれ違っているのですから、すべてを“人並み”にこなせる必要はなし。強いところをさらに強化し、弱いところは思い切って捨てるという“選択と集中”こそが重要だということです。
才能のタネは自分では見えづらいものです。
なぜなら、才能があれば、そのことはさほど努力しなくとも自然にできてしまうから。
人の才能は「音楽家が曲を書く」といったわかりやすいものから、「人を巻き込むのが上手」といった見えにくいものまで、さまざまです。
見えにくいものは、自分から探しに行ってほしいというのが、僕の願いです。(「はじめに」より)
そこで本書は、自分では見えていない才能を可視化し、強みに育て上げることを目的としているのだそうです。
第2章「自分の“才能のタネ”を知り、強みに育てる方法」内の「自己認識に欠かせない6つのマインドセット」に注目してみましょう。
1. 人はみな、才能のタネを持っている
まず最初に押さえておくべきは、誰もがみな、なんらかの才能のタネを持っているという基本的な事実。
しかし、それを当たり前に使えてしまっているからこそ、多くの人がそのことに気づいていないのだそう。つまり、生まれ変わる必要はないわけです。ただ、本当の自分を「知る」だけでいいということ。(40ページより)
2. 自分を過小評価しない
人間には、ネガティブな思考を繰り返す性質があるもの。
ある研究によると、人の脳は1日に6万個も考えごとをしており、そのうち95%が前日、前々日に考えていたことだったそうです。しかもその80%がネガティブな思考だったのだとか(Marci Shimoff with Corol Kline,“Happy for No Reason : 7 Step to Being”, Atria Books)。
少なくとも、自分を責めることにはあまり意味がないようです。(41ページより)
3. 誰も「ひとり」では生きられない
ビジネスの世界においても、誰もひとりでは成功できません。すべての成果は助け合いのシステムのなかで生まれているわけです。
その証拠に、ひとりで行っているように見える仕事も、一歩離れて全体像を見てみれば、たくさんの人が有機的に関わり合っているのだと理解できるはず。
すなわち、仕事や人生で成功を収めるためには、数多くの協力者の力が必要。上司や同僚であれ、部下であれ顧客であれ、あるいはパートナーや友人、子どもたちであれ、他者の力を得られれば、発揮できる能力は何倍にもなるということです。(41ページより)
4. 私の常識とあなたの常識は違う
これまで生きてきた道のりも、考え方や価値観も、生まれ持った気質もすべて、“私”と“あなた”は違うものーー。
それは誰しもが認識していることですが、そうでありながら無意識のうちに、「自分にとっての“当たり前”が世の中の“当たり前”だと考えてしまいがちでもあります。
しかし、すべての人が納得するような「当たり前」や「常識」など、どこにもありません。そして常識とは、自分の才能の組み合わせでつくられるものだと著者はいいます。
「自分が“当たり前”に行っている(しかし、他人にとっては必ずしも当たり前ではない)こと」「一般常識だと感じている“ものさし”に気付くこと」が、自身の才能のタネを発見するコツであるとも。(43ページより)
5. ありのままでいる勇気を持つ
著者いわく、才能のタネを見つけるうえで大切なのは次の3つ。
・正直になること
・本心を明かすこと
・ありのままでいる勇気を持つこと
(44ページより)
自己認識、つまり本当の自分を把握する過程においては、さまざまな思いが交錯するものです。
ときには耳の痛い話を聞かなければならないかもしれませんし、見たくない現実と向き合う必要性も生じるでしょう。
自己認識を妨げる恐怖や虚栄心、自分の心に正直になれない障害物にぶちあたったときは、自分を知りたいと思った「目的」に立ちかえってください。
自己認識がどれだけあなたの人生を助けてくれるかという「効用」を思い出してください。(44ページより)
すべての人に好かれるなど無理な話。みんなに好かれようと努力すればするほど、どんどん自分を見失っていくものです。
まわりの人の目を気にしすぎて、自分の幸せを犠牲にする必要はないということ。(43ページより)
6. 才能のタネを育てていくために努力する
才能のタネを育てる過程では、努力や工夫が必要になってくるはず。
自己認識だけで終わってしまったのでは、才能のタネは生かされないまま。それでは、強みへと成長させられないわけです。
したがって、すぐに成果が見えなかったとしても、根気よく、試行錯誤を繰り返しながら、才能のタネを育てていくことが大切。手をかければ、いつか必ず開花するものだからです。(45ページより)
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育て上げた自分の強みを、自分のためだけではなく、誰かのために発揮できるようになったとき、人生は“自分が思い描くように”進み始めるだろうと著者は予測しています。
そんな人生を送るためにも、ぜひ参考にしておきたい一冊です。
Source: 朝日新聞出版
Photo: 印南敦史