江戸のスポーツ歴史事典 谷釜尋徳著

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江戸のスポーツ歴史事典

『江戸のスポーツ歴史事典』

著者
谷釜 尋徳 [著]
出版社
柏書房
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784760152841
発売日
2020/10/24
価格
3,520円(税込)

書籍情報:openBD

江戸のスポーツ歴史事典 谷釜尋徳著

[レビュアー] 木内昇(作家)

 遠足(とおあし)とは、江戸時代の、いわゆる長距離レースのこと。安中藩主が藩士たちの鍛錬のため、中山道29キロを走破させたのが起源らしい。そのルートも、碓氷峠の急勾配を越えたというから、さしずめ江戸版「山の神」も登場したのだろう。着順を確認する役の神官が、ゴール地点へ向かう途中、ランナーに追い抜かれた、なんてハプニングが勃発しているのも面白い。

 他にも、騎馬でスティックを使って毬(まり)を籠に入れるという、ラクロスとバスケットボールが融合したような打毬(だきゅう)や、三十三間堂の軒下で行われた通し矢など、現代の種目に通じるものから、二手に分かれて石を投げ合う印字打ちといった合戦形式の過激な競技まで、武士や庶民が楽しんだ多様なスポーツが成り立ちと共に紹介されている。

 戦がない世で武士が体や技を鍛えるために考案されたものが多く、なるほどスポーツは平和だからこそ打ち込めるのだ、と改めて感じた次第。個人的には、相撲の取り組みを、両力士と行司まで単身演じてみせる一人相撲を見てみたかった。現代に受け継がれていないのが、なんとも惜しい。(柏書房、3200円)

読売新聞
2020年12月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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