古典で旅する茶の湯八〇〇年史 竹本千鶴著

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古典で旅する茶の湯八〇〇年史

『古典で旅する茶の湯八〇〇年史』

著者
竹本千鶴 [著]
出版社
淡交社
ジャンル
芸術・生活/諸芸・娯楽
ISBN
9784473044242
発売日
2020/11/07
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

古典で旅する茶の湯八〇〇年史 竹本千鶴著

[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)

 茶道とは疎遠でも、お茶を毎日飲む人は多い。本書は、抹茶が日本に伝わってから800年の茶の湯の歴史を、古典とそれが語る人物から物語る。難解な古典も、登場人物が一人称で語るなど、親しめる文体として読みやすい。

 古典は、茶の苦味を薬とした栄西『喫茶養生記』から、信長・秀吉時代のフロイス『日本史』や茶会記、そして岡倉天心『茶の本』に至る。

 茶の変遷は、唐物(からもの)の茶道具を飾る室町将軍の茶から大名茶となり、わび茶が生まれ、戦国・信長・秀吉時代の茶会となった。道具・場や次第の変化を具体的にたどる。茶会は政治の場でもあり、権力者に近づき殺された利休や山上宗二のような悲劇もあった。

 茶人は信長側近の松井友閑、堺衆の津田宗及、利休や博多衆の神屋宗湛、そして信長、秀吉から松平不昧、井伊直弼に及ぶ。各時代茶人の好みと生き方を、姿が見えるような語り口で描く。信長と秀吉の茶の比較は興味深く、一期一会の起源も深める。

 伝説でなく古典に則した着実さが魅力。コロナ禍で一服も難しい時節に、古典を逍遥(しょうよう)し先人を思うこともよいのでは。(淡交社、1600円)

読売新聞
2020年12月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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