学校弁護士 神内聡著 角川新書

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学校弁護士 スクールロイヤーが見た教育現場

『学校弁護士 スクールロイヤーが見た教育現場』

著者
神内 聡 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
社会科学/教育
ISBN
9784040823171
発売日
2020/10/10
価格
990円(税込)

書籍情報:openBD

学校弁護士 神内聡著 角川新書

[レビュアー] 稲野和利(ふるさと財団理事長)

 「スクールロイヤー」とはいったい何か。著者は、「顧問弁護士とは別に、弁護士資格を持つ人材として教育委員会や学校法人などと一定の継続的な関係を持っている者」と理解する。東京都の私立高校で勤務する社会科教師である著者は弁護士資格も有しており、類例のない究極のスクールロイヤーだ。本書は、そのような立場にある著者が、教育現場の実態を踏まえた問題提起を行い、地に足のついた教育論議によりスクールロイヤーの役割を考えようとするものである。いじめ、虐待、不登校、校則、体罰、教師の過重労働など内容は多岐にわたる。

 現在全国60以上の自治体でスクールロイヤーが導入されている。背景には学校現場で発生する様々な今日的問題があり、法的観点からの問題解決が期待されているわけだが、実は法律と教育との相性は必ずしもよくないと著者は指摘する。例えば、いじめの問題だ。「いじめ防止対策推進法」は被害者と加害者の単純な二項対立的構図を措定するが、実際のケースでは被害者とされた子どもがある時点では加害者であったりするなど現実の様相は複雑で、法の要請する画一的取扱いには馴染(なじ)まないことも多い。

 著者はスクールロイヤーが「子どもの最善の利益」を実現するためには「適法」「違法」の判断だけでなく、教育的視点も踏まえた現実的対案を示すことが肝要であると説く。そのためには、スクールロイヤーが利益相反等のリスク回避の観点から子どもに会いにくい現状を変えるべく制度設計を見直すこと、縦割り機能を改めスクールロイヤーを「チームとしての学校」の一員として扱う制度を築くべきと提案する。

 本書の底流にあるのは法律家としての論理ではなく、教師としての熱い心であり、教師という職業に対する愛着である。いつの時代でも教育現場においては、法律ではなくそのような「熱きもの」が出発点になることをあらためて意識することとなった。

読売新聞
2020年12月20日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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