不安を引きずらない、平常心で生きるための3つのポイント

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不安を引きずらない、平常心で生きるための3つのポイント

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

新しい年が始まりました。気持ちも新たに進んでいきたいものですが、とはいえ「年が明けたからといって、細々とした不安が解消できたわけではないし…」と感じている方も少なくないはず。

そこでご紹介したいのが、『不安に負けない気持ちの整理術 ハンディ版』(和⽥秀樹 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)です。

気鋭の精神科医が、不安への対処法を明らかにした書籍。根底にあるのは、まず冷静になり、「本当に不安に思うべきことはなにか」を見極めることが大切だという考え方。

そのうえで、適切な行動を見つけていく必要があるというのです。なお、こういった発想を精神医療の分野でいち早く提唱したのが、森田正馬(まさたけ)(1874〜1938)という精神科医なのだとか。

森田が創設した森田療法では、不安をなくしたいと考えていると、不安は余計に増幅すると考えます。

森田療法では、不安感情をコントロールするのではなく、不安感情に対する態度や行動に注目して、それを治すというアプローチを取ります。そのために、本来の目標は何かを考えていきます。(「はじめに」より)

たとえば顔が赤くなることに悩んでいる人に対し、森田は「あなたはどうして顔が赤くなるのが嫌なの?」と尋ねるそう。

その結果、患者が「人に嫌われてしまうからです」という返事が返ってきたら、「それなら、人に好かれることができれば、顔は赤いままでもいいわけだよね。世の中には顔が赤くても人に好かれている人はいるし、逆に顔が赤くなくても嫌われている人はいるよ。だから、顔が赤くなるのを治すのではなく、人に好かれる方法を考えよう」と答えるというのです。

つまり、本来の目標がわかれば、その目標を達成するための方法を見つけ出し、行動することができるということ。きょうは第3章「平常心で生きる10の方法」のなかから、3つのポイントを抜き出してみたいと思います。

不安があっても、とにかく行動してみる

★生きている限り不安はなくならない。

★行動を起こして、可能性がマイナスになることはない。

★不安でもとりあえず行動することが大切。

不安感情が強い人は、何とか不安を取り除こうとしたり、不安に打ち勝つ強い心を保とうとしたりするもの。

しかし、生きている限り不安がゼロになることはないはず。まずは、そのことを意識しておく必要があるようです。

ところで森田正馬は、平常心を「純な心」と表現しているのだそうです。

それは、「どのみち不安はつきまとうのだ」と気づき、不安があるままに生きるという考え方。そして、不安なままであっても、大切なのはとにかく行動してみること。

たとえば、好きな異性を目の前にして、声をかけられない人がいます。振られたらどうしようと、不安のあまり身動きが取れない状態です。

でも、声をかけない状態は、ふられているのとまったく同じ。

(中略)異性に告白して、仮に振られたとしても、そこではじめてあきらめればいいのです。少なくとも好意を持っていることを伝えられたのですから、これは悪いことではありません。

もしかしたら何年後かに急接近する可能性が生まれたともいえるのです。(135ページより)

ここでは恋愛を例に挙げていますが、同じことは仕事に関してもいえそうです。行動を起こして可能性が増えることはあっても、マイナスになることはないわけです。(134ページより)

職場以外の居場所をつくる

★職場や学校以外の居場所や逃げ場をつくろう。

★他にも居場所があると思えば、言いたいことを主張できる。

★複数の居場所を持つと、不安が小さくなる。

自分の居場所がひとつしかない人は、不安に引きずられやすくなるはず。たとえば「職場がすべて」だとすると、「職場で嫌われたら終わり」だと考えざるを得なくなってしまうわけです。

対して、「職場は居場所のなかのほんの一部」と考える人には余裕があるもの。嫌われることを恐れずに自分のいいたいことを主張できるため、職場は自然と居心地のよい場所になっていくということです。

だからこそ大切なのは、職場や学校以外に居場所や逃げ場をつくること。

職場の人間関係についていえば、それは仕事上のつきあいにすぎないと割り切って距離を取ってみるのもひとつの策。誘われても飲み会などには参加せず、家族との時間を大切にするという選択肢もあるわけです。

あるいは、もしも家庭に居場所がないとしたら、趣味の習い事やサークルに参加するという手段も。

別に、新しい人間関係を求めなくても大丈夫です。大切なのは、職場や学校以外に自分の居場所を持っているかどうか。

スポーツジムで、一人黙々と汗を流す。ボランティアで地域の清掃活動に参加する。そこに自分の世界があれば、過ごし方など自由です。(152ページより)

どこであれ安心できる居場所が見つかれば、不安に引きずられなくて済むということなのでしょう。(150ページより)

具体的に書き出してみる

★不安なことを書き出すと冷静になれる。

★悩みの中でも「できること」に積極的に取り組もう。

★事実と思考を分けて日記を書こう。

不安と向き合うにあたっては、「不安を具体的に書き出してみる」ことが有効。書き出してみると、まず「解決できること」と「できないこと」が明確になるものだからです。

そればかりか、確率が高いか低いかによっても不安を分類することは可能。いずれにしても、そうしたうえで「解決できること」「確率が高いこと」に優先的に取り組めば、建設的な対応となるわけです。

書き出すときには、症状ではなく、態度を書くのがコツです。

森田療法のキーワードのひとつに「症状不問」があります。「自分を悩ませる症状そのものには目を向けるな」ということです。

たとえば、頭が痛いときに「頭が痛い」と書くのではなく「頭が痛いときに何をしたか」「行動したことでどうなったか」について書きます。

森田療法では「頭が痛くて、どうしたの?」と聞きます。

「痛くて、会議に出ませんでした」と答えが返ってきます。

そこで、「会議には出なかったけど、それでもできたことはない?」と、さらに質問をします。

こうやって、どんな態度を取ったかを掘り下げていくと「最低限メールはチェックしました」など、自分ができたことに目が向いてくるわけです。(155ページより)

実際に書き出してみると、不安はたいしたことではないと気づくもの。あるいは、いつも同じことばかり不安視していることもわかるそうです。したがって、書き出すだけで冷静になれるということです。(154ページより)

著者によれば、不安感情を完全になくすことは不可能。ただし、不安に引きずられない選択をすることは可能だそう。

すなわち「不安を受け入れ、不安とともに生きる」ということです。そんな考え方に基づいて書かれた本書は、不安とともに生きるためのヒントを与えてくれることでしょう。

Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2021年1月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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