<東北の本棚>自身の来し方を考える

レビュー

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ある晴れた日に、墓じまい

『ある晴れた日に、墓じまい』

著者
堀川 アサコ [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041097731
発売日
2020/08/25
価格
660円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>自身の来し方を考える

[レビュアー] 河北新報

 実家の墓の将来に頭を悩ませる女性を主人公に、青森市の幻想小説作家が文庫本に書き下ろした。少子化が進み、現実世界でも自分の意志で墓を撤去する「墓じまい」が増えているという。身近なテーマを取り上げ、親世代とのあつれきなどリアルな悩みを軽妙な筆致で描いた。
 主人公の正美は、東京都内で小さな古書店を経営する44歳。家族に恵まれず、離婚経験もある。小児科医の父は横暴で男尊女卑が激しい。父に反発して家を出た兄とは、ほぼ音信不通。知的障害のある姉は遠方の施設で暮らし、母は亡くなった。正美は乳がんを患ったことをきっかけに、実家の墓じまいに動きだす。
 本書では寺からの墓の撤去のほか、永代供養墓や樹木葬、散骨などの選択肢が紹介される。先祖の遺骨をどう供養し、自身の埋葬はどうしたいのか。正美は墓じまいを通し、自身の来し方や家族との思い出にも向き合う。
 がん闘病や古書店経営の苦労、家族や元夫らが抱える問題、家族の死後に明らかになった人間関係、友人の死など、エピソードが盛りだくさん。ベテランの手腕で一気に読ませるものの、やや消化不良な印象を受けた。タイムリーな題材だけに、墓じまいを巡るドラマをじっくり読んでみたかった。(和)
   ◇
 KADOKAWA(0570)002301=660円。

河北新報
2021年1月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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