栢木まどか監修 「復興建築」
[レビュアー] 読売新聞
復興建築とは、1923年の関東大震災で焼失・壊滅した東京市街地の復興のため最先端をめざした建物のこと。
それまでの木造に代えて耐震・耐火構造の鉄筋コンクリート造が採用され、官庁・駅・学校・オフィスや寺社・集合住宅など多様な建物が作られた。耐久性に富む建物は、戦災や高度成長期の開発をくぐり抜け、まだ現役のものも残る。
本書の魅力は、豊富な外観・室内の写真と、住人への聞き取りによる建物での暮らしぶりの紹介にある。
近代都市をめざしたモダン建築は、みな輝いて見える。復興小学校と公園を一体として防災拠点とするなど、建物のみでなく災害に強い都市計画でもあった。
後藤新平らによる帝都復興計画が見据えた100年先が間近となった今、改めて建物を探訪して先人の優れた知恵にふれるのもよいのではないか。(トゥーヴァージンズ、1900円)評・佐藤信