長い歴史を誇り、多くのドラマを生んできた箱根駅伝に「幻の」と形容される大会があった。戦時色が強まり昭和15年の大会後中断されたが、学生たちが学徒出陣を控え、「死ぬ前に、箱根路を走りたい」と企画した18年の22回大会だ。
名称もコースも異なる同大会はいかに行われ、選手たちは何を思ったか。関係者の証言、資料から迫り、克明に再現した「歴史に残るデッドヒート」には手に汗握る。文庫化で、戦時下と現在のコロナ禍を重ね合わせた著者は、「どんなときでも道は開かれる」と改めて思いを込めている。(澤宮優著、集英社文庫・600円+税)

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2021年1月17日 掲載
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