「キノベス!2021」紀伊國屋書店スタッフが選ぶベスト30の推薦コメントを紹介

レビュー

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「キノベス!2021」ベスト30を発表

1位『滅びの前のシャングリラ』凪良ゆう(中央公論新社)

【千葉拓・ららぽーと横浜店】
この物語はきっと多くの人を救うと思うけれど、それは単なる癒しや慰めではなく、自分の人生の根源といやおうなしに向き合わされた果ての希望そして諦念。希望と幸福と滅びが同時に存在して輝いているラストシーンの美しさはこの先もずっと忘れられないと思う。

【米本教助・アリオ鳳店】
容赦なく残酷なのに優しさが溢れてる不思議な小説。世界の終末は、それぞれの生きづらさと向き合うためのきっかけに過ぎない。その葛藤が読み手の記憶にそっと触れてくるから、私はこの物語を近くに感じるのだろう。

【平野千恵子・イトーヨーカドー木場店】
ラスト1ページ、最高のボルテージで立ち上がってくる、絶望と希望が無秩序に入り混じった生命の煌きを、全身で受け止めるために読み進んできた。どうしようもない理不尽さにあふれたこんな時代に、この物語が生まれるその偶然と必然があまりに胸を締めつける。

2位『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ(早川書房)

【池田匡隆・広島店】
ミステリーでありながら、1人の少女の成長記でもある、美しすぎる物語。もう超絶一気読みでした。声を大にして言いたい。今年の海外ミステリーは、コレです。

【玉本千幸・新宿本店】
主人公の過酷な運命に寄り添ってくれたのは、ほかのなにものでもなくノース・カロライナの自然でした。つらく困難な状況で一人生きることを強いられた少女の、それでもひたむきに前を向き成長していく姿に強く惹かれます。ラストは誰にも話したくない、読み終わった人だけの宝物です。

【吉田咲子・徳島店】
風を感じ、光を感じる。鳥たちの羽音が聞こえる。これほどまでに美しい情景に取り込まれていく感覚は初めてだ。痛いほど共感できる彼女の孤独。真の意味で「生き抜く」ということ。泣きながら、祈りながら、それでもこの美しい世界にいつまでも浸っていたくて何日もかけてページをめくった。

3位『この本を盗む者は』深緑野分(KADOKAWA)

【猪股康太・国分寺店】
最初の見開き2ページだけでも、ぜひ読んでもらいたいです。というのも、その2ページには本好きが手に取ると「物語を一気に読み終えてしまう」不思議な魔法がかかっているからなのです! 本が好き! 物語が好き! な方々にぼくはこの本が好きです、と伝えたくなる1冊でした。

【岡田健・泉北店】
本を愛する者はみなこの本に“呼ばれて”しまう。きっと貴方も手に取るだろう。その瞬間を彼女が静かに待っている。どこからともなく風が吹いた時、貴方は否応なしに知らされる。本を愛してしまった時点で私たちはもう手遅れなんだ。

【池上晃子・新宿本店】
本を盗むと呪いが発動!町が物語の世界になって犯人がその物語の檻に閉じ込められる!! この設定だけでも胸熱!!! 本好きにはたまらない本の物語を冒険する物語。

4位『本を売る技術』矢部潤子(本の雑誌社)

【宮崎るみ子・加古川店】
これほどまでAI化が進んでいるというのに、どこまでもアナログな書店業界。昭和の話にしか思えないけれど、ついこないだまで、そして今もこれが現実。お客様にとったらどうでもいい話かもしれない。でも書店の現場はいつも真剣です。

5位『あつかったらぬげばいい』ヨシタケシンスケ(白泉社)

【小嶋早英子・セブンパークアリオ柏店】
何かを始める時や諦める時、面倒だったり後ろめたかったりするとつい理屈や言い訳をこねまわしがちだけど、ものごとって意外とシンプル。そう、暑かったら脱げばいい。疲れたら寝ちゃえばいい。それで傷ついたり迷惑するひとがいないのなら。

6位『逆ソクラテス』伊坂幸太郎(集英社)

【浦上かよ・徳島店】
「僕は、そうは思わない」人間関係を破壊させる滅びの呪文のような言葉。一人の少年が仲間に伝授したこの言葉は唱え方ひとつで攻撃力、戦闘力抜群の復活の呪文へと変わる。地球に人間、何人いると思ってんの。少年、君の言う通り! 貴方も唱えてみませんか?

7位『食べることと出すこと』頭木弘樹(医学書院)

【四井志郎・ブランド事業推進部】
死にかけたり笑い飛ばしたり仕事を失ったり愛を叫んだりしないので、同じ病気の人以外には響かないかもしれない闘病記ですが、いつか排泄文学アンソロジーを読みたいのでみなさん買ってください。

8位『カラオケ行こ!』和山やま(KADOKAWA)

【長田路代・丸亀店】
読み始め数ぺージ、噴き出しました。うまいなー話の持っていき方がって思いました。後、ドラマ化して欲しいなと。配役とか関係なく話が広がりそうで。若頭も始終好き勝手、主人公の聡実も開き直ったのか若頭相手にやりたい放題。おもしろかったです。

9位『日没』桐野夏生(岩波書店)

【千葉拓・ららぽーと横浜店】
小説の大きな仕事の一つが、虚構の世界を描くことで現実をよりリアルに浮き上がらせることだとしたら、この作品は寒気がするほどその試みに成功している。ここで描かれる地獄は、もはや他人事ではない近い未来だ。今、もっとも読まれなければならない作品だと思う。

10位『タイタン』野崎まど(講談社)

【奥野菜緒子・ゆめタウン廿日市店】
仕事をしなくてもいい未来とは、どんな世界が待ち受けているのか。序盤に既存の概念を全部にぶち壊して、その上ではじまったのがAIのための「お仕事小説」。人類って本当に必要なのか。こんな未来は誰にも予想できない。

11位『百年と一日』柴崎友香(筑摩書房)

【小嶋早英子・セブンパークアリオ柏店】
何者でもない人々の、ささやかだけれどかけがえのない日々。謎とも言えない日常の小さな不思議。バラバラの人生が織りなすモザイク画のような小説。大きな事件は何も起こらないのに少しも退屈しない。いつまででも読んでいたい。

12位『ものがたりの家 吉田誠治美術設定集』吉田誠治(パイインターナショナル)

【生武正基・新宿本店】
この本の家々は実は世界のどこかにあるのでは? 住人たちはどんな生活をしているのだろう? 自分が住むならどの家がいいだろう?いっそ探しに旅に出てみるか? 色々考え、こまごまとすみずみまで想像してしまう。こういうワクワクを「浪漫」っていう。この本は浪漫の増幅装置。

13位『自転しながら公転する』山本文緒(新潮社)

【伊藤奈穂子・セブンパークアリオ柏店】
親の介護、非正規雇用、セクハラ、煮え切らない交際相手、将来への不安・・全てが重くのしかかる。でも本当にダメなのは何も決められない自分自身で。共感しすぎて途中読むのがつらくなりましたが、時間をかけてでも読むべき価値のある1冊!

14位『パチンコ』ミン・ジン・リー(文藝春秋)

【池田匡隆・広島店】
あらゆる文学賞を受賞してもまだ物足りないほどの世界的名作。コロナで揺れた2020年、この本に出合えたことが私には救いだった。『百年の孤独』のように数十年後もハードカバーで読み継がれていてほしい。

15位『ざらざらをさわる』三好愛(晶文社)

【奥野智詞・ゆめタウン広島店】
日々の暮らしの中に時折見つける違和感やふとした気づき。その記憶を著者はそっと取り出して観察してみる。手ざわりを確かめて言葉とイラストで描写していく。丁寧に綴られた輪郭は自分もどこかで感じたものを「かたち」にしてくれていて、ささやかなつながりにふっと息が漏れる。

16位『家族じまい』桜木紫乃(集英社)

【志村和紀・北海道地区業務センター】
歳を取り、病気を患い、様々な軋轢を経て終わりを迎える頃合いの家族の関係。なんとなく目線から外していた将来が立ち現われたようで陰鬱な気持ちになりながらも、それが家族なんだと諦観すべきなのか考えさせられる。

17位『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』岸田奈美(小学館)

【金子聡美・首都圏西営業部】
SNSになんて無縁の私が、偶然出会った「岸田奈美note」。応援したい…。そんな彼女の本が出版された。支援なんて大それた事はできないけれど、本を買う事は私にもできる!でも逆に「ぬくもり」という支援を受けた気持ちになった。

18位『海をあげる』上間陽子(筑摩書房)

【佐貫聡美・和書販売促進部】
先入観なしに読み始めましたが涙を止められませんでした。読後、何かを受け取ってしまったような…読み終わったのにこれからが始まりのような…沖縄で暮らす人々が語らない言葉にこそ、耳を傾けなければならない――そういう気持ちです。

19位『ホハレ峠 ダムに沈んだ徳山村 百年の軌跡』大西暢夫(彩流社)

【林下沙代・札幌本店】
インパクトある表紙に、手に取ることを一瞬ためらう方もいらっしゃるかもしれません…(私もそうでした)。ひとりの人間を通して語られる、現代化によって失われたものの重み。これは決して遠い昔の話などではなく、この延長線上に「今」があるということを、ずっしりと感じる一冊です。

20位『食べ歩くインド 南・西編 インド全土の料理と食堂案内』小林真樹(旅行人)

【長田雅子・札幌本店】
食器の買い付けで頻繁にインドを訪れた筆者の20年に渡る食べ歩きの記録である同時に、その土地に住む人たちの食の歴史・文化を体感している錯覚を起こす。味を想像しながら眺めているだけで楽しくおいしい食事ガイドブック。北・東編も同時刊行。

21位『奈落』古市憲寿(新潮社)

【生武正基・新宿本店】
感情を刺激するのが小説。その振れ幅のデカさが小説のすごさというのなら、この作品は相当にすごい。ただし、感情が動かされるのは「負」の方向。読後、タイトル同様どん底まで気分落ち込んだ。こういうのでも「刺さった」というのか? 文字通り痛すぎるんですけどー!

22位『沖晴くんの涙を殺して』額賀澪(双葉社)

【飯田稚菜・梅田本店】
喜びの感情以外を失った沖晴君と余命一年を宣告された京香が出会うことで沖晴君が感情を取り戻していく物語。日々色んな感情に振り回されながら過ごしている日常が愛しく感じられて、たまたま生きているだけの今を噛みしめていきたいと思わせてくれる。

23位『私のジャンルに「神」がいます』真田つづる(KADOKAWA)

【齋藤一哉・仙台店】
Twitterで不定期連載されていた時のタイトルは、「同人女の感情」。まさにその名の通りごくごく一部の人にしか響かないかもしれませんが、それ以外の人にもぜひこの本を読んで創作沼にハマって、ゆくゆくは新刊書店で売るような本の作者に育って欲しいと思います。

24位『コロナの時代の僕ら』パオロ・ジョルダーノ(早川書房)

【伊藤稔・mozoワンダーシティ店】
好むと好まざるとにかかわらず、2020年は「新型コロナ」の年であった。春に刊行された本エッセイ集の「あとがき」にある文章は、きっと数年後も輝きを放っているはずだ。繰り返される「僕は忘れたくない」から始まるそれをぜひ読んで頂きたい。そして心のずっと奥の方にしまっておいて頂きたい。”

25位『夜明けのすべて』瀬尾まいこ(水鈴社)

【小泉真規子・梅田本店】
病気って目には見えないものも多く、人によって症状も感じ方も違っているので、誰かと共感するのは実はとっても難しい。でも、その辛さをおもいやって手助けすることは出来るかもしれない。ひとり苦しんでいる人にそっと寄り添ってくれる、そんな優しさあふれる1冊。

26位『あめつちのうた』朝倉宏景(講談社)

【中川浩・eコマース事業部】
甲子園球場のグラウンドを陰で支える阪神園芸の人たちをモチーフに描くフィクション。これからの進路への迷いではなく、既に自らが選んだ進路で今まさに悩む人に贈りたい。読後感は爽快。きっと心が後押しされる一冊。

27位『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ(中央公論新社)

【吉本萌花・ゆめタウン廿日市店】
似た境遇をもつ女性と少年が出会うことで始まる物語。抱えている苦しみや後悔にそっと寄り添ってくれる1冊です。ぜひ、最後の最後まで2人を見届けて欲しいです。この本が52ヘルツの声で鳴く誰かの救いになりますように。

28位『イマジン?』有川ひろ(幻冬舎)

【長田路代・丸亀店】
有川先生! 続きが読みたいです! 読んだ瞬間に、そう叫びました。購入したのは発売後すぐ。次巻が出るかなんてわかりもしないのに、携帯で検索しまくりました(笑)想像力は人を動かす力になる! 想像力を働かせ、次巻発売を妄想しながら、待ちます。

29位『中古典のすすめ』斎藤美奈子(紀伊國屋書店)

【生武正基・新宿本店】
評価未定のかつて売れた本、「中古典」を著者の鋭い解説で切る。その切断面から「時代」が見え、「意識」が臭うのが面白い。特に自分が売れるのを目の当たりにした本は特別な感情を抱く。誰もがそんな同時期を生きた本がある。それが「古典」入りするか否か確かめてみては。

30位『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』ブレイディみかこ(筑摩書房)

【佐貫聡美・和書販売促進部】
異なる立場・意見を持つ者同士が関わりあう限り対立は避けられない。それでも対話する事をあきらめければ「隣人」として共に生きる事はできるはず――人種や性差別などうんざりする事件が幾度も繰り返される今日、今こそブレイディさんを読むべき時だと強く感じます。

キノベス!2021の全ラインアップは公式サイトで!

「キノベス!」は過去1年間に出版された新刊を対象に、紀伊國屋書店で働く全スタッフから公募した推薦コメントをもとに選考委員の投票でベスト30を決定し、お客様に全力でおすすめしようという企画です。今年は16名の選考委員が全社から集まった応募コメントを熟読し、ベスト30を決定しました。当社のスタッフが自分で読んでみてほんとうに面白いと思った本ばかりを自信を持っておすすめします。店頭で、ぜひお手にとってご覧ください。

紀伊國屋書店
2021年1月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

紀伊國屋書店

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