『税金下げろ、規制をなくせ』
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長引く日本経済低迷の理由とは――減税と規制改革を導く実践的戦略書
[レビュアー] 江崎道朗(評論家)
就任したばかりの菅義偉首相が昨年9月27日、渡瀬裕哉・早稲田大学公共政策研究所招聘研究員と一対一で会ったことから、「渡瀬とは誰」と永田町ではちょっとした話題になった。
渡瀬氏は、アメリカ政治や規制改革などを専門とする若手研究者で、その最新刊が『税金下げろ、規制をなくせ 日本経済復活の処方箋』だ。
一読して、うーんと考え込んでしまった。日本経済が低迷し、生活に苦しむ国民が増えたのは、高い税金と社会保障費のせいだったと指摘しているからだ。
国民が税金や社会保障費用をどの程度負担しているかを示す指標が「国民負担率」だ。
この負担率が半世紀で倍近くになっているのだ。
一九七〇年度には24・3%だったのに、二〇二〇年度には44・6%に増大している。社会保障負担に至ってはこの五〇年で5・4%から18・1%と実に三倍以上に膨れ上がっている。
こうした数字をもとに渡瀬氏はこう断言する。
《かつての日本では税金や社会保障負担は少なかったのです。ということは、働けば働いた分だけ貯金もできるし、若い頃に結婚がしやすかったとも言えます。翻って現代の若者は、重い税負担と社会保障負担で苦しんでおり、世代間の格差は大きくなっています》
増えたのは税金だけではない。規制も急増し、民間ビジネスは萎縮させられてしまったと渡瀬氏は指摘する。
《一九九〇年代、日本はひたすら公共事業などを起こし続け、また規制やそれに関連した法律を増やし続け、どんどん身動きが取れない状態になっていきました》
現に一九七〇~八〇年代には一〇〇〇本前後に過ぎなかった法律が一九九〇年代に倍増し、それに伴って許認可権などの規制権限も増えていった。
一方、衰退する大国と揶揄されていたアメリカは、減税によって国内需要を喚起し、規制改革によってGAFAに代表される新たなビジネスを生み出し、国際競争力を取り戻していった。
一九八〇年代後半、経済力で日本に追い抜かれつつあったアメリカが復活できたのは、減税と規制改革で民間活力を取り戻そうとしたからだという分析は一考に値する。
では、アメリカではどうやって減税と規制改革に成功したのか。本書では、利権をむさぼる連中に対抗した「税金を下げろ連合」の動向も詳述されている。減税と規制改革を実現するための実践的戦略の書でもある。