コロナワクチンの不安・疑問に応える

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コロナワクチンの不安・疑問に応える

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 新型コロナ第三波の世界的な拡大はとどまるところを知らない。こうした状況に、一条の光ともいうべき朗報となったのが、ワクチンの登場だ。日本でも二月下旬の接種開始を目指し、調整が始まっている。だがこのワクチンは、核酸ワクチンと呼ばれる新しいタイプのものである上、副反応などの報道もあるため、不安や疑問を持っている方も多いことだろう。

 峰宗太郎、山中浩之『新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実』は、こうした声に応える一冊だ。ウイルス学や免疫学の基礎から始まり、ワクチンの原理、臨床試験結果の読み解き方などが順を追って丁寧に解説されている。各種の専門用語、従来のワクチンとの違い、九五パーセントの有効性という数字の意味など、いま知りたい事柄がわかりやすく語られているのはありがたい。

 この本の後半部分は、ワクチンではなくこれまでの日本の新型コロナ対策の解説や、新しい情報への向き合い方に費やされている。PCR検査の拡大に関する議論の部分だけでも、本書を読む価値は十分あるといえるだろう。

 科学に関して素人の編集者が、ウイルス免疫学者にインタビューしたものが対話形式でまとめられており、非常に読みやすいのも特色だ。新型コロナについて正しく知りたいという人に対して、どの本を勧めるかと問われたら、筆者はまず本書を挙げたい。溢れる情報に惑わされることが、ずいぶん減ることだろう。

新潮社 週刊新潮
2021年1月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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