<東北の本棚>山名の由来 隣国で推理

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<東北の本棚>山名の由来 隣国で推理

[レビュアー] 河北新報

『太白山 日本、韓国、中国の歴史を巡る旅』八嶋寛[著](東北アウトドア情報センター)

 仙台市の南に座し、多くの市民に親しまれている標高321メートルの太白山。政令市・仙台にある5区の名称の一つにも採用されている。本書は山の名の由来を巡る旅と調査の記録である。
 登山家の著者は、25年以上前に韓国と中国にも太白山があることを知り、太白山を巡る旅が始まる。韓国、中国の太白山を登り、麓を巡って山の名前の由来や地域の歴史、文化、自然などを調査。中国と北朝鮮の国境の山、中国名長白山、北朝鮮名白頭山の登山経験もあり、長白山が古くは太白山と呼ばれていたという一節も興味深い。
 中国の太白山の山頂付近で「抜仙台」と朱書きされた岩を見つけたことから、太白山と仙台の名前の関連について関心が高まった。冒頭、太白山が市民に親しまれていると書いたが、麓の生出地区の住民は「オイデモリ」と呼ぶという。調査によると、「太白」が初めて文献に登場したのは江戸時代中期の仙台藩の地誌「奥羽観蹟聞老志(かんせきもんろうし)」。仙台城に関する説明の中で、七ツ森、泉ケ岳、蔵王連峰とみられる山の古名と共に、「ウトカモリ」と振られた「太白嶺」という名の山が記されていた。
 この記述から、太白山の由来について推理が進む。「聞老志」を著した儒学者佐久間洞巌は朝鮮、中国の地誌にも通じ、仙人の住む理想郷を意味する「仙臺」という地名を踏まえ、山岳信仰の山、鉱物や森林が豊かな山とされる韓国や中国の太白山を仙台城近くの山に重ねたのではないか…。
 著者は仙台市生まれ、70歳。安全登山などの研究、啓蒙(けいもう)を進める東北アウトドア情報センターの代表。日本ヒマラヤ協会会員、日本山岳会会員。「中高年のための安全登山のすすめ」などの著書がある。(あ)
   ◇
 東北アウトドア情報センター発行、販売はみやぎNPOプラザ022(256)0505=880円。

河北新報
2021年1月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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