世界のひきこもり ぼそっと池井多著

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世界のひきこもり 地下茎コスモポリタニズムの出現

『世界のひきこもり 地下茎コスモポリタニズムの出現』

著者
ぼそっと池井多 [著]
出版社
寿郎社
ISBN
9784909281296
発売日
2020/10/23
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

世界のひきこもり ぼそっと池井多著

[レビュアー] 加藤聖文(歴史学者・国文学研究資料館准教授)

 「ひきこもり」は定義が難しい。日本だけの特異な現象ではなく、世界のどこにでもいるらしい。大昔なら「世捨て人」、アルプスの少女ハイジのおんじもひきこもりといえなくないが、彼らは社会からその存在が認識されている。しかし、現代のひきこもりは、社会から存在そのものがないことにされている。

 本書は、「世界ひきこもり機構」を立ち上げたひきこもり歴35年の筆者による世界のひきこもりたちとの対話集だ。タイトルはキワモノっぽいが、筆者は語学が達者なノンフィクションライターなので、しっかりした読物になっている。ひきこもりは多種多様、要因も複雑、「解決策」も一筋縄ではいかない。と同時に、この対談はインターネット時代だからこそ可能だった試みであり、ひきこもりにとってインターネットは無限の可能性を与えてくれることもわかる。私たちが抱くイメージは一面的で浅薄だ。

 効率化、画一化される現代社会では、ひきこもりはむしろ増えていくだろう。コロナ禍で誰もがひきこもりになってしまった今、その深淵(しんえん)を覗(のぞ)きみることは無駄ではなかろう。 (寿郎社、1800円)

読売新聞
2021年1月17日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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