<東北の本棚>「復興とは?」 時を記録
[レビュアー] 河北新報
民家の居間にまではびこる雑草。わが物顔で軒先を荒らす野生化した豚。夜の駅前商店街は街灯と信号機だけがともり続ける。人影のない町でも、時間は止まらず無情に流れる。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に見舞われた福島県浜通り地方の9年間を、モノクロ30点、カラー66点の写真で伝える。
港をがれきが埋め尽くす。除染廃棄物の仮置き場を前に家が建つ。海の気配を消すほど高い防潮堤、農地を覆う太陽光発電のパネル。元の暮らしの記憶はどんどん遠ざかる。復興とは誰の、何のためのものなのか、一枚一枚が問いを投げ掛ける。
著者は1948年大分県生まれ、仙台市在住。福島は「社会人になって自分を最初に育ててくれた土地」だという。恩ある人々が浴びた、いわれなき中傷への怒りを原動力に、シャッターボタンを押し続けた。(ぐ)
JRP出版局発行、藤田篤男さん022(276)4333=2750円。