<東北の本棚>子育てママの奮闘物語

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月はまた昇る

『月はまた昇る』

著者
成田名璃子 [著]
出版社
徳間書店
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784198651558
発売日
2020/09/09
価格
1,815円(税込)

書籍情報:openBD

<東北の本棚>子育てママの奮闘物語

[レビュアー] 河北新報

 舞台は待機児童があふれる東京湾岸部のM区。不動産会社で街づくりプロジェクトを担当していた彩芽は出産後すぐに職場復帰するはずだったが、保育園が見つからない。会員制交流サイト(SNS)を通じて出会った敦子と梨乃の能力を見抜いた彩芽が一念発起し、「保育園つくっちゃいませんか?」と呼び掛ける。一見、荒唐無稽な物語に引き込まれていくのは、3人が抱える問題がリアルだからだろう。
 シングルマザーで経理が得意な敦子は「昭和の悪いエキスを煮詰めたような職場」でセクハラに悩む。一人娘は、知育教室のオプションを受講するよう熱心に勧める保育園「ワオ・ガーデン」の雰囲気になじめない。元保育士の梨乃の夫は外資系企業に勤めるモラルハラスメント男。上から目線で、妻を家に閉じ込めようとする。彩芽は子育てに専念するようしゅうとめから圧力を受けている。
 3人は、再開発が続く湾岸部にありながらも昭和の街並みが残る地区で開園を目指す。コンセプトは、人情が残る地域の住民に子育てを見守ってもらう「商店街の保育園」だ。町内会長の協力で、カフェを併設するという園にぴったりの元店舗が見つかる。しかし、その空き店舗の真向かいには、保育園業界で幅を利かせる園長が君臨するワオ・ガーデンが…。
 行き詰まった状況からの逆転をもたらすのは、自身の本当の気持ちを偽りその日一日をやり過ごしてきた3人の気付きだ。敦子が「私の世界では、私が主役」と自覚するように、それぞれが殻を破り道を切り開く様子は爽快だ。
 著者は1975年青森県生まれ。著書に「東京すみっこごはん」シリーズなどがある。(安)
 徳間書店049(293)5521=1815円。

河北新報
2021年1月31日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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