服のはなし 行司千絵著

レビュー

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服のはなし 着たり,縫ったり,考えたり

『服のはなし 着たり,縫ったり,考えたり』

著者
行司 千絵 [著]
出版社
岩波書店
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784000614436
発売日
2020/12/18
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

服のはなし 行司千絵著

[レビュアー] 梅内美華子(歌人)

 着るものはその人を物語る。冬の室内で、母は綿入れの羽織を、私はフリースのジャケットを着ている。羽織は明治二十一年生まれの曽祖母と、大正七年生まれの祖母の着物を仕立て直したものだ。母は生地を通して血縁に包まれ、私は大量生産されたファストファッションを纏(まと)う。

 本書の随所に挟まれた写真に引かれるままに読み始めた。ブラウス、ワンピース、サロペット、コート……デザインや生地や色の組み合わせなどの自由度から一目で手作りだとわかる。着ている老婦人は満足や楽しいという言葉では取り零(こぼ)してしまうような柔和で自然な笑顔をしている。

 著者の行司千絵さんはお母さんや自分の服を作っている。プロではなく見様見真似(みようみまね)で始めた趣味。本業は京都新聞社の記者である。婚家から飛び出した瀬戸内寂聴さんが風呂敷で服を作った話、ハロウィーンなどの仮装に「生きづらい日常から自分を切り離す」役割があることなど、取材や自らの手を通して生き方や心と切り離せない服の在りようを考えている。あなたはどんな服を着て笑いたい?と静かに問いかけてくる一冊だ。(岩波書店、1800円)

読売新聞
2021年1月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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