「地中海食」が、睡眠の質をよくするのはなぜ? 積極的に摂りたい食材は?

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「地中海食」が、睡眠の質をよくするのはなぜ? 積極的に摂りたい食材は?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

医師である『4週間で誰でも寝つきがよくなる 最速入眠プログラム』(マイケル・モズリー 著、井上麻衣 訳、CCCメディアハウス)の著者は、特徴的な「熟睡プログラム(安眠プログラム)」を推奨しています。

最新の科学研究に基づいたそれらは、ふたつのアプローチを中心としたもの。

まずひとつ目は、「睡眠制限療法」

不眠症を解消するための最も効果的な手段は、短期間の睡眠制限によって脳を再起動させることだという考え方。つまりは「睡眠時間を減らす」療法であり、ぐっすり眠るために、ベッドにいる時間を減らすべきだと主張しているのです。

そして、もうひとつのアプローチは食事。

睡眠の質を高めるといわれる食べ物を、積極的に摂ろうということです。

マメ科の野菜や食物繊維の豊富な食べ物をたくさん食べ、糖分の多い夜食を控えること、それこそが熟睡のレベルを一気に高め、気分も改善する最も効果的な方法だというのです。

食物繊維の豊富な食べ物は、腸内の何兆個もの「善玉菌」に栄養を与え、その善玉菌が、ストレスや不安を軽減する化学物質を生産してくれる。

だが、理由はそれだけではない。すばらしい科学の世界へと、みなさんをお連れしたいと思っている。(「はじめに」より)

「睡眠制限療法」もさることながら、食べ物によって睡眠の質が高まるというアプローチは、さらに気になるところではないでしょうか? なにしろ、ちょっとした工夫で睡眠を改善できるかもしれないのですから。

そこできょうは、第5章「快適に眠るための食事」に焦点を当ててみたいと思います。

睡眠の質を向上させる食べ物とは

睡眠の質を向上させる食べ物について語るにあたり、著者はまず「地中海食」を紹介しています。

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、これは地中海周辺の国々の伝統的な食事のこと。単においしいだけでなく、健康上にも多くの利点があるのだそうです。

たとえば研究により、次のことが明らかになっているのだといいます。

・心臓発作や脳卒中のリスクが約30%低下する

・2型糖尿病になるリスクが50%低下する

・乳がんになるリスクが70%低下する

(141ページより)

オリーブオイルやナッツ類、脂肪分の多い魚、フルーツ、野菜、全粒穀物を大量に消費するのが、伝統的な地中海食の特徴。

また、脂肪分たっぷりのヨーグルトやチーズもよく摂取される食物だといいます。夕食のお供には、赤ワインが1、2杯ついてくることも。ただしケーキやビスケット、加工度の高い食品はほとんど出番がないそう。

いくつ当てはまる? 地中海食スコアチェック

ちなみに次の質問に答えると、自分の食事の「地中海食スコア」の高さがわかるとか。

「はい」が10個以上なら、「地中海食スコア」が高いということです。(141ページより)

1 料理に使う油やドレッシングには、オリーブオイルを使っていますか

2 毎日2食以上、野菜を食べていますか(1食につき200グラム/7オンス程度)

3 毎日2回以上、フルーツを食べていますか(甘味の強いトロピカルフルーツは含まない)

4 加工肉を食べるのは、1日に1食以下ですか(1食につき100グラム/3.5オンス程度)

5 週に3回以上、高脂肪ヨーグルトを食べていますか

6 週に3食以上、マメ科の食物(エンドウ豆、インゲン豆、レンズ豆など)を食べていますか(1食につき150グラム/5.25オンス程度)

7 週に3食以上、全粒の穀物を食べていますか(1食につき150グラム/5.25オンス程度)

8 週に3食以上、脂肪分の多い魚、エビ、貝類を食べていますか(1食につき100〜150グラム/3.5〜5.25オンス程度)

9 ケーキやビスケットなどの甘いお菓子を食べるのは、週に3回以下ですか

10 週に3回以上、ナッツ類を食べますか(1回につき30グラム/1オンス程度)

11 週に3回以上、にんにく、玉ねぎ、トマトを使ったメニューを作りますか

12 週に7杯程度の赤ワインを飲んでいますか

13 1日に2回以上は、テーブルに着いて食事をしていますか

14 甘味飲料や炭酸飲料を飲むのは、週に1回以下ですか

(142〜143ページより)

こんな注意点も。

備考

・じゃがいもは野菜に数えない

・甘みの強いトロピカルフルーツには、メロン、ブドウ、パイナップル、バナナなどが含まれる

・加工肉には、ハム、ベーコン、ソーセージ、サラミなどが含まれる

・全粒の穀物には、キヌア、全粒ライ麦、ブルグア(トルコおよび周辺地域で食べられる、小麦を半ゆでにして乾燥させ、粗挽きした食品)などが含まれる

・ナッツ類には、クルミ、アーモンド、カシューナッツ、ピーナッツが含まれる(無塩のものに限る)

・1週間に7ユニット(1ユニット=純アルコール8グラム)以上のアルコール摂取は、健康にリスクを生じるおそれがある(注:飲酒のガイドラインは、国によって異なる)

(143〜144ページより)

地中海食が睡眠に与える影響は?

地中海食に関する研究の大半は、心臓発作やがん、認知症、糖尿病といった疾患のリスクを下げる効果に焦点を当てたもの。

しかし近年では定評のある学術誌において、地中海食が睡眠に与える影響に着目した大規模研究の成果も発表されているのだそうです。

1

地中海食におなじみのオリーブオイル、脂肪分の多い魚、豆類、野菜といった食物には、オレイン酸、オメガ3脂肪酸、ポリフェノールなどの抗炎症性化合物が含まれている。

炎症は関節炎やその他の痛みを伴う症状を引き起こすため、安眠の妨げにもなる。

また、年齢とともに起こりやすくなる神経炎症(脳の炎症)も、睡眠不足や認知症の原因となることが知られている。

2

地中海食は腸内の「善玉菌」を増やしてくれる。善玉菌は、強力な抗炎症性物質や、不安を軽減するという「気分がよくなる」化学物質を生成する。

夜眠れない主な原因は、あれこれ思い悩んでイライラすることなので、気分をよくしてくれるものなら、安眠効果もあるはずだ。

(146ページより)

地中海食が睡眠を助けるということには、こうしたさまざまな理由があるようです。(144ページより)

フードライターが考案した、善玉菌が(もちろん食べる人も)喜ぶ食材をふんだんに使ったおいしい料理のレシピも掲載。もちろん「睡眠制限療法」についても、すぐに取り入れられそうなアイデアがふんだんに盛り込まれています。

したがって、睡眠についての悩みを抱える方々にとって、心強い内容だといえると思います。快適な朝を迎えられるように、参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: CCCメディアハウス

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2021年2月9日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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