『境界線』中山七里著
[レビュアー] 産経新聞社
東日本大震災から7年が経過したある日、宮城県気仙沼市の海岸で女性の遺体が発見された。遺留品の身分証から、女性は県警捜査1課警部・笘篠誠一郎の妻という。妻は震災の津波で行方不明だった。現場に急ぐ笘篠。しかし、まったくの別人だった。なぜ妻の身元が流出し、騙(かた)られていたのか-。捜査する笘篠のもとに、新たな遺体発見の一報が入る。
震災10年を前に刊行された社会派長編。震災に翻弄された人々の人生の岐路を濃密に描いた。今作は宮城県警シリーズ2作目。前作『護(まも)られなかった者たちへ』は今秋に映画化が予定されている。(NHK出版・1600円+税)