シリーズ累計20万部突破 前後篇にふさわしい結末が待つ書き下ろし警察小説

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  • 脳科学捜査官 真田夏希 デンジャラス・ゴールド
  • 脳科学捜査官 真田夏希 エキサイティング・シルバー
  • 本所おけら長屋(十五)
  • 大福三つ巴 宝来堂うまいもん番付

書籍情報:openBD

シリーズ累計20万部突破前後篇にふさわしい結末が待つ書き下ろし警察小説

[レビュアー] 縄田一男(文芸評論家)

 文庫では、ミステリ、時代小説を問わず書き下ろし作品が大人気だ。

 鳴神響一『脳科学捜査官真田夏希 デンジャラス・ゴールド』『同 エキサイティング・シルバー』はシリーズ初の前後篇。『ゴールド』では、夏希と彼女が解決した過去の事件が次々と謎のVチューバーによってアップされ、揶揄される日々が続く。その一方で、世界を危機に落とし入れることの出来る、ある才能を秘めた少女が誘拐される事件を追うことに。『シルバー』では、公安の官僚失踪事件を追う捜査官二人が文字通り世界を駆け廻り、マフィアも恐れる秘密結社《ディスマス》の存在を知る。そして二つの事件が結びついたときに知らされる真相は、正に前後篇にふさわしいシリーズ最高の興奮を呼ぶ。

 鳴神作品はシリーズ累計20万部突破だが、畠山健二『本所おけら長屋(十五)』(PHP文芸文庫)は、累計118万部というからド胆を抜かれる。苦界に身を沈めた娘が家伝の味噌漬でその身と藩の財政を救う「はるざれ」。五十年来の純愛がようやく実を結ぶ感動の一篇「なつぜみ」。嫁姑の争いが意外な展開を見せる「あきなす」といった、江戸の四季を背景とした事件に長屋の住人たちが善意で関わってゆくという設定は、誰もが楽しめる内容であろう。これらの物語に、ラスト、長屋に住む浪人・鉄斎自身の事件ともいうべき「ふゆどり」まで、味わい深い秀作揃い。この巻から読んでも充分、楽しめる。

 最後は、田牧大和『大福三つ巴 宝来堂うまいもん番付』(講談社文庫)である。第一作にもかかわらず通しタイトルがついているのは、同文庫で二つのシリーズを成功させている作者のこと、はじめからシリーズ化を目指しての刊行だからではないか。物語は江戸の小さな板元、宝来堂がつくった「大福番付」をめぐって、いがみ合う二つの菓子屋が騒動を起こしたのを発端にさまざまな事件が出来。それを宝来堂の娘絵師・小春らが解決していく物語。江戸世話ものの神髄ともいうべき、作者のキメ細かな文体も、じっくりと味わいたい。

新潮社 週刊新潮
2021年2月25日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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