美術の経済 小川敦生著

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美術の経済 “名画”を生み出すお金の話

『美術の経済 “名画”を生み出すお金の話』

著者
小川敦生 [著]
出版社
インプレス
ISBN
9784295008637
発売日
2020/10/22
価格
1,848円(税込)

書籍情報:openBD

美術の経済 小川敦生著

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

 巻頭、ボールペンの試し書きみたいなぐるぐるの線が、サザビーズの美術品オークションで約87億円で落札された現代の名画だというくだりで、著者はこう記している。「美術を巡る経済にはこんな特殊な状況が出現しているわけだが、そこからはどんな世界を覗(のぞ)き見ることができるのだろうか」

 美術品が生むお金と美術品を生むお金が成り立たせている美術経済の仕組みを多様な観点から解析して、本書にはバラエティ豊かな読み応えがある。たとえば「襖(ふすま)絵から見た経済」では、江戸時代の御用絵師=公務員芸術家という雇用形態を高く評価し、その代表的な画家である狩野探幽の仕事ぶりを見る。「パトロンとしての美術館」では、かつての権力者たちに代わる現代のコレクター、美術館は本当に“金持ち”なのかを考えてみる。では、美術品の流通を支える美術商はどうだろう。現代ではネットギャラリーが新たな美術品市場を形成しつつある――などの興味深い経済トピックのあとに、ぱらりと二ページだけ付された「カネと無関係な美術品」が強く胸にしみるのです。(インプレス、1680円)

読売新聞
2021年2月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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