近代中国の日本書翻訳出版史 田雁著

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近代中国の日本書翻訳出版史

『近代中国の日本書翻訳出版史』

著者
田 雁 [著]/小野寺 史郎 [訳]/古谷 創 [訳]/中村 元哉 [著]
出版社
東京大学出版会
ジャンル
総記/総記
ISBN
9784130262750
発売日
2020/12/11
価格
7,920円(税込)

書籍情報:openBD

近代中国の日本書翻訳出版史 田雁著

[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)

 著者は、日本留学経験をもつ中国の編集者。中国語に翻訳された日本書の調査成果をもとに、近代の日本書翻訳の歴史的動向を解明する。日中文化交流史の一面を鮮やかに描いた仕事である。

 中国の日本観は、日清戦争後に「軽日」から近代化の手本として「師日」に変化する。日本に留学生を送り、翻訳日本書を通して西洋文明や新たな語彙(ごい)を受容した。

 中華民国期には、日本帝国の対中進出を受けて「拒日」から「抗日」へと移行する。1949年の中華人民共和国の成立後文革期までは、翻訳書は政治的制約を受ける。70年代からの日中友好期には日本書翻訳は発展し、80年代には推理小説・漫画に広がる。

 21世紀には、政治的冷却を受け「嫌日」となるが、村上春樹らが広く受容され、健康管理・服飾など新分野やアニメの翻訳が展開する。ただ日本を知る経路は活字から新メディアに移り、翻訳書の市場化で真の相互理解は遠のく。

 翻訳書の傾向や他国例との比較の分析は説得的。日中相互理解を悲観せず客観的に考えるうえで参考となろう。小野寺史郎・古谷創訳。(東京大学出版会、7200円)

読売新聞
2021年2月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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