<東北の本棚>心の鍵穴に合う一編を
[レビュアー] 河北新報
詩がいかに多様かを知るかもしれない。本書は宮城県詩人会が毎年発行する会員の作品集で46編を収録。若手から全国で活躍するベテランまで詩歴も作風もさまざまだ。
生老病死、戦争、信仰など普遍的主題もあれば、東日本大震災や幼児虐待など社会に向き合った詩もある。内省的で深い静寂をまとった詩、技巧を駆使した表現、絶叫型など人となりまで見えてくる。
<彷徨する都市の小さな隙間に揺れている/丈低い草木に口を難く結び祈る人がいる(中略)ものがたりの途絶えたまちを/あのことばから始まるだろう時間を胸に/幻の幼子を抱いて歩いている>(竹内英典「おろおろとここを」)
詩の鑑賞に余計な講釈は不要だろう。一つ言えるのが詩は感じるものだということ。
<思想が論理なぞとはウソだよ/思想は心というおもしが選びとる/地の涯を見透す眼差しなのだよ>(丹野文夫「あの風の行方に」)
そして、一言でも自分の心の鍵穴に合ったら、それが「良い詩」だということ。
<詩の一行は神の恩寵である/心を尽くして求め/与えられる/奇蹟のように出会い/生成する>(千田基嗣「詩の一行は」)
眠れない夜のための一編を、探してほしい。(建)
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あきは書館022(341)8413=1540円。