宇宙の話をしよう 作・小野雅裕、絵・利根川初美 SBクリエイティブ

レビュー

4
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宇宙の話をしよう

『宇宙の話をしよう』

著者
小野雅裕 [著]
出版社
SBクリエイティブ
ジャンル
自然科学/天文・地学
ISBN
9784815602666
発売日
2020/11/21
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

宇宙の話をしよう 作・小野雅裕、絵・利根川初美 SBクリエイティブ

[レビュアー] 仲野徹(生命科学者・大阪大教授)

 宇宙はロマンだ。言い古された言葉かもしれない。しかし、この本を読んであらためてそう思った。

 ツィオルコフスキー、ゴダード、オーベルト、露米独の3か国でロケットの父と称される3人ともが、ジュール・ベルヌのSF小説『地球から月へ』を読んで宇宙に目覚めた。

 冒頭にあるこのエピソードだけでも十分にロマンではないか。そこからぐいぐいと宇宙開発の歴史についての物語に引き込まれていった。

 NASAの研究所に勤務する父が、ちょっと変わった12歳の娘ミーちゃんに語りかける体裁がとられた絵本である。対話が楽しくてわかりやすいだけでなく、絵がかわいらしいし、文章にはルビがふってあるので、小学校高学年なら十分に読める。

 しかし、子どもだけに読ませておくのはもったいない。ロケット推進の原理であるロケット方程式、宇宙のダークマター、ロケット開発の基礎になった弾道ミサイル開発、アインシュタインの相対性理論など、宇宙やロケットを理解するための基礎がコラムで丁寧に解説されていて、宇宙開発の歴史や基本を知りたい大人にも格好の入門書だ。

 つい先日、火星探査車パーシビアランスが無事着陸したことが報じられた。著者の小野雅裕はNASAのジェット推進研究所に勤務し、その自動運転ソフトウェアの開発や地上管制に携わっている研究者である。

 若い頃になど戻りたくないといつもうそぶいているのだが、小野の『宇宙を目指して海を渡る MITで得た学び、NASA転職を決めた理由』(東洋経済新報社)を読んだ時だけは違った。こんなに熱い人生があり得るのなら戻ってもいいと感動し、帰国された時に会いに行ったほどだ。

 この本には、熱量あふれる小野の知恵とロマンがぎっしりと詰まっている。実際の娘ミーちゃんはまだ4歳らしいが、いつか家でこんな会話が交わされるようになるのだろうか。何ともうらやましい限りである。

読売新聞
2021年2月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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