藤田庄市著「現代山岳信仰曼荼羅」

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現代山岳信仰曼荼羅

『現代山岳信仰曼荼羅』

著者
藤田庄市 [著]
出版社
天夢人
ISBN
9784635822510
発売日
2021/12/18
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

藤田庄市著「現代山岳信仰曼荼羅」

[レビュアー] 中島隆博(哲学者・東京大教授)

 羽黒山の修験道の修行に、南蛮いぶしがある。唐辛子や米ぬかを炭火の上に置き、その煙に燻(いぶ)される地獄の行である。なぜそのような苦行をなすのか。著者は修験道の源流に、個人だけでなく共同体の罪を滅ぼそうとする苦行があったからだという。それは、後に仏教の本覚(ほんがく)思想が入り込み、仏性が具(そな)わっているなら修行など不要だという解釈が出ても、揺らぐものではなかった。修行による身体的な変容と精神的な変容は一体だということだろう。

 本書は高尾山、富士山、各地の御嶽山、国東(くにさき)半島の六郷満山、羽黒山、吉野から熊野に至る大峯山脈での現代的な修験の形を、先達と呼ばれる山伏の含蓄ある言葉とともに、貴重な数々の写真によって紹介している。明治の神仏分離や修験道廃止によっても途絶えることのなかった、修行により験力(げんりき)を得て人々の救済に身を投じる「修行得験(とっけん)」の現在地がここにある。(天夢人、1800円)

読売新聞
2021年2月28日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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